研究実績の概要 |
(1)免疫組織学的解析・末梢好塩基球活性化の解析慢性痒疹・水疱性類天疱瘡などにおける皮膚病変部の好塩基球の浸潤についてモノクローナル抗体を用いて解析。痒疹、蕁麻疹、水疱性類天疱瘡部に多数浸潤していることを明らかにした。慢性難治性皮膚疾患の反応形成における好塩基球の役割を解析した。また、慢性痒疹、アトピー性皮膚炎の末梢血好塩基球の活性化マーカーであるCD203の発現を解析して皮膚病変の重症度との関連性に関して解析した(Ito Y et al : Basophil recruitment and activation in inflammatory skin diseases. Allergy, 66 : 1107, 2011)。水疱性類天疱瘡における病勢と好塩基球のCD203の発現の強さを検討したところ発現のレベルが病勢と一致してることを明らかにした。Ugajin T et al. Br J Dermatol. 2015 Apr 27.) (2)抗原特異的IgE遺伝子導入マウスを用いたモデルマウスによる痒疹の病態解析 抗原特異的IgE導入マウスを用いて痒疹モデルマウスを作製した。孤立性の角化性丘疹で好塩基球、好酸球、肥満細胞が密に浸潤。このモデルマウスを用いて発症機序、痒疹反応とはサイトカインパターンが類似。好塩基球に特異的モノクローナル抗体を用いて新規治療法の開発。好塩基球特異的モノクローナル抗体を作成しているので、これらの抗体による治療法の可能性を検討した (Ugajin T, J Leukoc Biol,2009, Hashimoto T,J Immunol,2015)。さらにマウスおよびヒト好塩基球において、MTがIL-4産生を制御していることを明らかにした(Ugajin T, Mol Immuno,2014)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、抗原特異的IgE導入マウスの背部に大量の抗原を数回皮下投与することにより誘導した痒疹モデルマウスを用いての発症機序、痒疹反応との違いなどに関して各種サイトカイン、ケモカイン、接着因子、Th1,Th2,Th17細胞に関してRT PCT法を用いてmRNAの発現、ELISAにて蛋白レベルでの検討しており痒疹におけるサイトカインパターンと痒疹モデルマウスで一致することが明らかにされた(Hashimoto T,J Immunol in press)。今年度ではSTAT6の役割も解析でき順調に研究は進んでいる。痒疹モデルマウスで好塩基球が産生する大量のIL-4がSTAT6を介してM2マクロファージを誘導でき痒疹反応が抑制できることが明らかになった。機序を解析して抗IgE抗体(オマリズマブを臨床応用する予定であり人を用いた研究でもマウスを用いた研究でも順調に解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は好塩基球の活性化の機序のin vitroでの解析である。最近、亜鉛(Zn)がアレルギー炎症反応においてシグナル伝達因子の調節因子としてとして重要な役割を果たすことが明らかにされている。好塩基球にFceRIを介した刺激を加え細胞内の亜鉛濃度を測定。各種Znt,MTの発現レベルをPCT法にて解析、また各種のtransporterの阻害剤を用いて主にどのZntが重要な役割を果たすか解析。また、Western blot法を用いて蛋白レベルでも検討する。各種Znt特異的モノクローナル抗体をもちいて好塩基球での発現を確認。FceRIを刺激した好塩基球からの各種サイトカイン、ケモカインの産生を欠損マウス、WTで比較検討する。さらにアレルギー性皮膚炎反応における亜鉛の役割解析するため経皮感作食物アナフィラキシー、ビタミンD3誘導体誘導性アトピー性皮膚炎モデルマウスなどIn vivoにおける各種皮膚炎症反応モデルマウスを用いて亜鉛、Zn transporter,MTの役割を解析する予定である。亜鉛をターゲットとした好塩基球の制御機構を解析していきたい。
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