研究実績の概要 |
(1)経皮感作食物アレルギーモデルの作成と病態解析 水分解小麦の経皮感作による小麦依存性運動誘発性アナフィラキシーなど蛋白抗原の経皮感作によるアナフィラキシーが社会問題になっている。そこで当研究室ではOVAをパッチテストチェンバーで1週間貼付後2週間ごとに3回貼付することを繰り返し後、50mgOVAの経口投与することによりアナフィラキシー反応を誘導するモデルマウスを作成した(図2)。この実験系を用いて肥満細胞、好塩基球の役割を解析する。アナフィラキシーを起こした腸管では肥満細胞、好塩基球ともに増加していることも明らかにしている(Yu R eta l,Exp Dermatol, 2017)。 (2)亜鉛シグナルの解析 好塩基球は、肥満細胞に類似し、高親和性のIgE受容体(FcεRI)を持ち、IgE/Ag刺激により、ケミカルメディエーターのほか、IL-4を多量に分泌する。近年、好塩基球がIL-4を分泌することでTh2細胞分化を誘導し、アレルギー炎症に関与する可能性が報告された。亜鉛(Zn)がシグナル伝達因子としてアレルギー炎症反応に重要な役割を果たすことが明らかにされている。宇賀神君がすでに、亜鉛シグナルによる好塩基球のIL-4産生の制御機構を解析する。マウス好塩基球は、IgE/Ag刺激後に亜鉛結合タンパクであるメタロチオネイン(MT)の発現が誘導された。そこで、MT欠損マウス由来の好塩基球を用い、IgE/Ag依存性のIL4産生をリアルタイムPCRやELISAにより検討したところ、野生型に比べて減弱した。MT欠損マウスにおける細胞内亜鉛濃度を、NewportGreenアッセイにて測定すると、野生型に比べて上昇が見られ、さらに細胞内亜鉛濃度の上昇は、好塩基球のIL-4産生に関与するシグナル分子の活性を抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性痒疹、アトピー性皮膚炎の痒疹部および正常人皮膚のクリオ切片を用い、好塩基球特異的抗体(BB1)抗CD4,CD8モノクローナル抗体を用いて病変部のリンパ球、好塩基球の浸潤を解析して痒疹反応形成における好塩基球の役割を解析し痒疹反応部で好塩基球が多数浸潤していることを報告した。(Ito Y et al: Basophil recruitment and activation in inflammatory skin diseases., Allergy, 66 : 1107, 2011)現在、抗原特異的IgE導入マウスの背部に大量の抗原を数回皮下投与し誘導した痒疹モデルマウスを用いての発症機序、痒疹反応との相異を各種サイトカイン、ケモカイン、接着因子、Th1,Th2,Th17細胞をRT PCT法を用いてmRNAの発現、ELISAにて蛋白レベルでの検討しており痒疹におけるサイトカインパターンと痒疹モデルマウスで一致することが明らかにされた(Hasimoto T,J Immunol 2015)。今年度ではSTAT6の役割も解析でき順調に研究は進んでいる。痒疹モデルマウスで好塩基球が産生する大量のIL-4がSTAT6を介してM2マクロファージを誘導、痒疹反応が抑制できることが明らかになった。さらにOVAをパッチテストチェンバーで1週間貼付後2週間毎に3回貼付することを繰り返し後、50μgOVAの経口投与することでアナフィラキシー反応を誘導するモデルマウスを作成した。今後、この実験系を用いて肥満細胞、好塩基球の役割を解析する。アナフィラキシーを起こした腸管では肥満細胞、好塩基球ともに増加していることも明らかにしている(Yu R eta l,Exp Dermatol, 2017)。現在、亜鉛を用いて食物アナフィラキしーモデルマウスを制御できるか解析している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は好塩基球の活性化の機序のin vitroでの解析である。最近、亜鉛(Zn)がアレルギー炎症反応においてシグナル伝達因子の調節因子としてとして重要な役割を果たすことが明らかにした。好塩基球にFceRIを介した刺激を加え細胞内の亜鉛濃度を測定。各種Znt,MTの発現レベルをPCT法にて解析、また各種のtransporterの阻害剤を用いて主にどのZntが重要な役割を果たすか解析を解析した。また、Western blot法を用いて蛋白レベルでも検討した。各種Znt特異的モノクローナル抗体をもちいて好塩基球での発現を確認。FceRIを刺激した好塩基球からの各種サイトカイン、ケモカインの産生を欠損マウス、WTで比較検討した。今後、アレルギー性皮膚炎反応における亜鉛の役割解析するため経皮感作食物アナフィラキシー、ビタミンD3誘導体誘導性アトピー性皮膚炎モデルマウス、経皮感作食物アナフィラキシーモデルなどIn vivoにおける各種皮膚炎症反応モデルマウスを用いて亜鉛、Zn transporter,MTの役割を解析する予定である。亜鉛をターゲットとした好塩基球の制御機構を解析して新規治療法の開発を目指す。
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