研究課題
本研究計画では、発毛シグナルとして近年注目されているWntシグナルに着目し、『発毛の制御』を実現することを目標とする。平成28年度(初年度)は、発毛に関わるWntシグナルの発現をreal time RT-PCRおよび免疫染色を用いて経時的に精査した。その結果、胎生期・生後・成獣マウスの各時期における皮膚・毛包の発生においてWnt/Frizzled各種ファミリーの複雑な発現パターンが存在することが明らかとなった。これらの成績を踏まえ、平成29年度(次年度)は、“発毛に特に重要なWnt/Frizzledファミリー”に着目し、in vitro培養系による影響を精査した。発毛段階で特に発現の高いWntに着目し、毛包幹細胞(EpSC)あるいは毛乳頭細胞(DPC)の培養系で細胞増殖、細胞分化等に対して調べた結果、ある種のWntが顕著な影響を及ぼす成績となった。さらに、マウス胎児皮膚(毛包形成段階前後)や成獣マウスより単離した毛包器官ユニットをin vitroで培養することで、毛包組織レベルでの影響を調べた結果、培養細胞系の成績と異なる影響も得られたことから、各種細胞から構成される“器官”での細胞間相乗的な効果も存在することが示唆された。最終年度となる平成30年度は、より生理的環境下において、Wntシグナルによる発毛制御を実現するために、成獣マウスの体毛を用いたin vivo実験を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に基づき、培養細胞系において期待した実験成果が得られている。また、学会発表等で成果報告を行っており、現在までに得られている成績をもとに、現在論文作成中である。
最終年度(平成30年度)では、これまでに得られた成績をもとに、発毛に特に重要なWnt/Frizzledファミリーに着目し、網羅的遺伝子解析と、Wntシグナルによるin vivo発毛制御を試みる。網羅的遺伝子解析では、毛包器官あるは胎児皮膚培養系(in vitro培養系)においてWntシグナルにより変化する遺伝子群を、フローサイトメーター(FACS)あるいはレーザーマイクロダイセクション(LMD)を用いて分取し、DNA arrayにより解析する。これにより、発毛におけるWntシグナル以外の遺伝子発現変動をフィードバック解析することで、発毛制御に関わるクロストークシグナル、動態を詳細に解析し、発毛に必須の条件・状態を見出す。また、生理的環境下でのWntシグナルによる発毛制御を実現するために、成獣マウスの体毛を用いてin vivo実験を行う。Wnt/Frizzledタンパク質を含侵させたビーズを移植することで、体毛における発毛制御を試みる。同時に、移植後に発毛が認められる毛包内の各種細胞を各種細胞マーカーにより単離し(FACSにより)、real time RT-PCRおよび免疫染色を用いて解析する。これをもとに、生体内での発毛制御後に生じる発現変動を詳細に解析し、論理的に発毛制御のメカニズムを解明する。
(理由)本研究計画の本年度(平成28-29年度)までに、in vitro細胞培養系を用いることで発毛に関わる種々の遺伝子発現変化を解析し、更に実験動物から単離した皮膚・毛包を用いて解析した。そのため、消耗品(各種培地やプラスチックシャーレ等)、実験動物の購入に研究費を使用した。本研究計画の発展的研究として、網羅的遺伝子発現解析を行う目的で、DNA array等の受託解析を行う予定であったが、本年度内に実施することができなかった。そのため、繰越金を使用して最終年度(平成30年度)の初頭に行う予定である。(使用計画)最終年度では、繰越金を合算してDNA array等を用いた解析を行いつつ、これまでに購入した消耗品を継続して使用することや、実験に必要な物品を計画的に購入することで、研究を遂行する。
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