研究課題
患者末梢血単核球に、抗体やサイトカインを添加後して、1週間の培養で、T細胞を活性化・増殖し、次世代のDLSTの確立に適した条件を検討した。薬剤特異的なT細胞の活性化・増殖を検出する方法として、IFN-γの産生をELISpot法で検出する方法を用いた。通常診療の血液検査としてDLSTを提出する薬疹患者からヘパリン採血により得た検体を用い、約20mlの採血を行い、この血液をFicol-Paqueを用いて遠心分離を行い、患者末梢血単核球を分離した。患者末梢血単核球をAB型血清添加したRPMI1640細胞培養液にて、細胞浮遊液を作成した。薬剤特異的T細胞を活性化・増殖させる上で、本研究に適した効率のよい方法として、抗CD3抗体、抗CD28抗体IL-2を添加する条件を確立した。薬疹患者の新鮮末梢血を分離し、これらの抗体やサイトカインを添加した上で、1週間活性化し、洗浄などにより抗体やサイトカインを除去してから、原因薬剤を添加してELISpot法を行ったところ、非特異的なIFN-γの産生が比較的少なく、従来の薬剤誘発IFN-γELISpotに比べ、IFN-γスポット数が増加した。また従来の薬剤誘発IFN-γELISpotが陰性となった症例の一部で、活性化リンパ球を用いた薬剤誘発IFN-γELISpotが陽性となり、従来の方法より感度が高いことが示唆された。また、従来から薬疹の原因薬剤の検討に用いられているDLSTが陰性となった症例でも、活性化リンパ球を用いた薬剤誘発IFN-γELISpotが陽性となり次世代の薬疹の原因薬検査法として有用である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
培養上清中のサイトカインをBead arrayにより数十種類のサイトカインの測定を行うことについては、検討できていないが、すでにIFN-γ ELISpotにより従来の方法より、高感度に検出可能な検査方法が確立できつつあるため、次世代の薬疹の原因薬検査法を開発する目的についてはおおむね順調に進展している。
前年度に確立した方法をもとに、IFN-γELISpot法で薬剤特異的に反応するT細胞が産生するサイトカインなどを検討することで、感度の高い検査法として確立を目指し、症例数を増やして検討を行う。蛍光顕微鏡を用いて、薬剤添加直後からの細胞内へのカルシウム流入を継時的に観察し、薬剤添加と、薬剤非添加での比較を行う。活性化・増殖後の薬疹患者末梢血単核球への原因薬剤添加後の細胞内へのカルシウム流入を、フローサイトメトリーでより定量的に解析し、薬剤特異的T細胞検出の方法として臨床応用への可能性を検討する。
IFN-γ以外にも計測を検討すべきサイトカインの候補を検討するため培養上清を用いたBead array解析を、業者へ委託して計測する予定であったが、すでにIFN-γで、より感度の高いin vitroの検査法が確立できる可能性が出てきたため、検討を保留している。
次年度あるいはそれ以降に研究の進捗状況に応じてサイトカインの候補を検討するため培養上清を用いたBead array解析を、業者へ委託して計測することを計画している。
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日本皮膚科学会雑誌
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奈良県医師会医学会年報
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