研究課題
本研究により、はじめにマウスB16F10モデルで、腫瘍内免疫環境は腫瘍内で抑制型マクロファージである腫瘍随伴性マクロファージ(TAMs)を、IFNbやイミキモドなど臨床で抗腫瘍薬として使われている薬剤により成熟過程で抗腫瘍型マクロファージに分化することを明らかにした。さらにそのマクロファージを単離して、ケモカイン産性能を検証したところ、ケモカインが制御性T細胞関連ケモカインからエフェクター細胞関連のケモカインに変化することが明らかになった。その結果、腫瘍内浸潤細胞中の制御性T細胞の比率が減弱することがわかった。これらの結果を人に応用するため、ヒト単球由来M2マクロファージを用いて各種薬剤の検証を行ったところ、IFNbはマウスの場合と同様にマクロファージから産生されるケモカインを抗腫瘍型に変化させることが分かった。以上、2015年にOncoimmunology (IF 7.644)に掲載した論文に追加データを加え、ニボルマブ、IFNb併用療法の臨床応用を行うため、医師主導臨床研究により安全性試験を行った。結果、ニボルマブとの併用の安全性はIFNb 300万単位で担保された。この結果はOncotarget (2017, in press:IF=5.008) に成果として掲載した。その他、臨床で悪性リンパ腫の治療薬として用いられている薬剤としてIFNaとIFNgのヒト単球由来M2マクロファージに対する影響を同様に行い、変化するケモカインが実際の治療患者の腫瘍内で変化すること、そのケモカインが誘導する細胞のフェノタイプが抑制型免疫担当細胞から抗腫瘍型免疫担当細胞に変化することを明らかにした。この結果は、2016年にExperimental Dermatology(IF=2.675)とJournal of Dermatological Science(IF=3.739)に掲載された。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では平成28年度内に、医師主導臨床研究を終え、かつ成果を国際誌(Oncotarget: IF=5.008) に採用となった。臨床応用のための安全性試験は当初の目的では平成29年の9月までかかる予定で、この成果を論文掲載するのは平成29年度内が目標であったため、予定より早く目標を達成できたと考えられる。また、この論文内での発表している免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーに関しての新知見も発表しており、かつこのバイオマーカーを国内特許の申請も終了している。さらに腫瘍随伴マクロファージという悪性黒色腫のみでなく、多彩な癌腫にあるこの細胞に対する各種薬剤の影響を網羅的に調べることにより、腫瘍随伴マクロファージをターゲットとした免疫療法は悪性黒色腫のみでなく、多彩な癌腫への応用も可能であることを明らかにした。実際、後述するように平成28年度の国際誌への掲載件数は主著で10件あり、予測された業績をはるかに上回ると考えられる。以上から、平成28年度の進捗状況は当初の計画以上に進展している。
今後、現在まで行われてきた、臨床応用における課題、インターフェロンベータとニボルマブ併用療法の臨床適応を目指し、医師主導臨床研究で、第2層試験を計画し、腫瘍随伴マクロファージをターゲットとした悪性黒色腫に対する免疫療法の開発、としてのインターフェロンベータ、ニボルマブ併用療法の効果判定を行う。同時に腫瘍随伴マクロファージに対する各種免疫調整薬の影響をマクロファージからのケモカイン産生に焦点を絞り解析することにより、悪性黒色腫以外の癌腫に対する新基地療法の開発の基礎データの構築を行う。さらにこれまで用いられてきた抗悪性黒色腫治療薬である、ダカルバジンやニムスチン酸塩酸塩、オンコビンなどの腫瘍随伴マクロファージへの影響を検証し、これらの薬剤の実臨床における使用法およびその役割を免疫学的背景から明らかにする。さらに、悪性黒色腫に適応の通っている、もう一つ免疫チェックポイント阻害薬である抗CTLA4抗体の効果を高める薬剤を腫瘍随伴マクロファージを解析することにより決定する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 産業財産権 (1件)
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