研究課題
近年アトピー性皮膚炎の病態において、表皮角化細胞から発現されるTSLP、そしてTSLP産生を誘導するペリオスチンが重要であることが報告された。そこで皮膚悪性リンパ腫の病変部におけるTSLP、ペリオスチン、TARCの役割を検討した。皮膚悪性リンパ腫病変部ではこれらの物質の発現が上昇しており、発現量には正の相関を認めた。病変部から培養した線維芽細胞では、Th2サイトカインによってぺリオスチンの産生が増強しており、ぺリオスチンは患者血清中でも上昇していた。次に皮膚リンパ腫細胞株をTSLPで刺激し、細胞増殖やサイトカイン産生への影響を検討した。TSLP受容体を発現する細胞株では、TSLP刺激によってTh2サイトカインの発現が上昇し、また細胞増殖もSTAT5のリン酸化依存性に増加した。マウスに皮膚リンパ腫細胞株を注射して腫瘍形成を確認したところ、抗TSLP抗体を同時に投与すると腫瘍形成が低下した。このようにTSLPは皮膚悪性リンパ腫において、Th2環境の維持のみならず、腫瘍細胞の増殖を直接誘導することが判明し、治療のターゲットになると考えられた。CD155は近年発見された腫瘍抗原の一つであり、そのリガンドのCD226はCD8陽性T細胞やNK細胞に発現していて腫瘍免疫に関与している。皮膚悪性リンパ腫の腫瘍細胞もCD155を発現しており、皮膚悪性リンパ腫患者末梢血中のCD8陽性T細胞、NK細胞でのCD226発現は病期の進行とともに低下していた。一方、血清中の可溶性CD226レベルは皮膚悪性リンパ腫の進行と共に上昇していた。可溶性CD226は皮膚リンパ腫細胞株の細胞死を誘導するため、進行期の患者では免疫担当細胞上のCD226発現が低下する代わりに、可溶性CD226が腫瘍免疫を担っていると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
皮膚悪性リンパ腫の腫瘍微小環境において、TSLP、ぺリオスチンが重要であることを患者検体、細胞株を用いて明確に示すことに成功し、論文化まで終了した。近年腫瘍免疫において注目されているCD155、CD226の皮膚悪性リンパ腫における役割も解析することができ、論文化まで終了した。当初2年目に行う予定であった研究が終了しており、計画以上に進展していると言える。
今後は血管新生因子やその他の液性因子について皮膚悪性リンパ腫への関与を検討していく。また免疫チェックポイント分子についても解析を行い、治療への応用を検討していく。TARCマウスにおける腫瘍免疫については、今後も予定通り解析を進めていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
Oncotarget
巻: 8(5) ページ: 7572-7585
10.18632/oncotarget.13810
Journal of Investigative Dermatology
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.jid.2017.03.025.
Journal of Dermatology
巻: 43(6) ページ: 638-642
10.1111/1346-8138.13199
Oncogene
巻: 35(28) ページ: 3692-3704
10.1038/onc.2015.435
巻: 7(12) ページ: 13563-13574
10.18632/oncotarget.6916
巻: 43(7) ページ: 819-822
10.1111/1346-8138.13278
Journal of Dermatological Science
巻: 82(3) ページ: 175-188
10.1016/j.jdermsci.2016.03.004
Archives of Dermatological Research
巻: 308(9) ページ: 655-660
10.1007/s00403-016-1683-2
Cancer Research
巻: 76(21) ページ: 6241-6252
10.1158/0008-5472.CAN-16-0992