研究課題
本年度も皮膚リンパ腫の腫瘍微小環境の免疫学に関する研究を行った。患者血清や病変皮膚におけるサイトカイン産生を検討し、病勢との相関や予後予測因子となるかどうかを調べた。まずIL-17ファミリーでTh2の誘導に関与するIL-25が、皮膚リンパ腫におけるTh2優位の腫瘍微小環境の形成に寄与していることを報告した。Th2サイトカインで表皮角化細胞を刺激するとIL-25の発現が上昇していた。またIL-19がアトピー性皮膚炎、皮膚リンパ腫で共通して上昇しており、Th17とTh2の架け橋になる可能性を示した。IL-17やIL-4刺激は表皮角化細胞からのIL-19産生を増強した。さらに乾癬への関与で知られているIL-36γの皮膚および血清での発現を調べたところ、アトピー性皮膚炎、皮膚リンパ腫で共通して上昇しており、Th2環境でも重要なサイトカインであることを見出した。可溶性CD48が皮膚リンパ腫患者血清で上昇しており、予後予測マーカーになることも報告した。血管新生因子については、VEGF-AとPlGFが皮膚リンパ腫の病態への関与していることを示した。VEGFは皮膚のかゆみ、PlGFは病変部の血管新生と相関していた。リンパ腫患者の血清中の可溶性CD226が腫瘍細胞のCD155を介して腫瘍の増殖抑制を起こすことも発見した。皮膚リンパ腫細胞は他の悪性腫瘍と同様にCD155を発現していること、進行期の患者ではCD8陽性細胞やNK細胞の表面のCD226の発現は低下するが、血清中の可溶性CD226は上昇することを示した。
2: おおむね順調に進展している
TARCマウスを用いたTh2と腫瘍微小環境の研究については、腫瘍形成実験の再現がなかなかうまくいかず、腫瘍環境における免疫担当細胞のフローによる解析が予想よりも進んでいない。一方で来年度の予定であった血管新生因子であるVEGF-AやPlGFの病態への関与については、臨床症状や病勢と発現との相関解析が終了し、すでに論文化することに成功している。またIL-19やIL-25、IL-36などのサイトカインとTh2優位の腫瘍環境に関する解析も行い、これらについても論文化に至っている。従って全体としては皮膚リンパ腫の微小環境の解析は進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
TARCマウスを用いたTh2と腫瘍微小環境の研究については、腫瘍形成実験がある程度成功した段階で論文化してまとめる予定である。皮膚リンパ腫細胞の腫瘍微小環境については、腫瘍細胞が発現するいくつかの分子がオートクラインとして働くことを示すデータが集積しつつあり、細胞内シグナルや分子の発現調節機構などの解析を行って投稿予定である。今後もTh2系疾患に関与する分子が見つかったら、それらと皮膚リンパ腫への関与を検討し、新たな治療ターゲットになりうるか検討していく予定である。
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