研究課題
皮膚の悪性リンパ腫は、菌状息肉症に代表される皮膚T細胞リンパ腫が大部分を占める。まずは進行期の菌状息肉症患者の末梢血を用いてIL-10産生制御性B細胞の数を測定し、健常人と比べて減っていることを見出した。制御性B細胞は過剰な炎症反応を抑制する細胞であり、その存在は正常な炎症反応が起きている証拠である。進行期ではリンパ腫細胞に対するがん免疫が落ちていることを反映していると考えられる。また皮膚T細胞リンパ腫では腫瘍細胞に異所性にCD137Lが発現しており、オートクライン、パラクライン的に腫瘍増殖、腫瘍生存、CXCR4を介した細胞遊走に寄与していることを見出した。細胞内シグナルとしてはAKT、ERK、MAPKなどが関与していた。このCD137Lの発現にはGATA6の過剰発現が関係しており、GATA6の発現を低下させるとCD137L発現も低下し、腫瘍細胞の生存率も低下した。さらに皮膚T細胞リンパ腫病変部では、Th2系の炎症との関与が報告されているHMGB1の発現が亢進していた。これはTh2サイトカインの発現と相関しており、腫瘍微小環境を調整することによって病気の進行に寄与していると考えた。また菌状息肉症患者の血清ではプログラニュリンの濃度が低下しており、病変部での発現も低下していた。菌状息肉症ではプログラニュリンの発現は抗菌ペプチドの発現と負の相関があり、プログラニュリンの発現低下が皮膚の易感染性のメカニズムの1つと考えた。このように本年度も菌状息肉症を代表とする皮膚リンパ腫におけるTh2優位の腫瘍微小環境の解明を行い、病態の理解、治療の開発の可能性へと貢献することができた。
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