研究課題/領域番号 |
16K10147
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松下 貴史 金沢大学, 附属病院, 講師 (60432126)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / B細胞 / サイトカイン / 制御性B細胞 / Effectro B細胞 |
研究実績の概要 |
マウスにおけるIL-6産生B細胞は、LPS(TLR4)と抗CD40抗体で24時間培養し、細胞内染色を行うことにより測定できることを確認した。IL-6産生にはLPS単独や抗CD40抗体単独での刺激では不十分で、LPSと抗CD40抗体両者による刺激が必須である。次にIL-6産生B細胞とIL-6非産生B細胞の細胞表面マーカーを比較し、IL-10産生B細胞に特異的な表面マーカーを検討したところ、IL-6産生B細胞ではCD1d、CD9、CD21が高発現しており、marginal zoneのフェノタイプを有していた。 B細胞特異的サイトカイン欠損マウスを骨髄キメラマウスから作成した。方法は野生型(WT)マウスを致死量放射線照射してレシピエントとし、次にB細胞を遺伝的に欠くμMTマウスおよびIL-6欠損(IL-6-/-)マウスから骨髄細胞を分離し、それぞれ8:2の割合で混合し、レシピエントに尾静脈より注入してミックス骨髄キメラマウス(B cell- IL-6-/-マウス)を作製した。コントロールマウスとしては、WTマウスおよびIL-6-/-マウスから骨髄細胞を分離し、それぞれ8:2の割合で混合し、レシピエントに尾静脈より注入してミックス骨髄キメラマウスを作成した。B細胞特異的IL-6欠損マウスのB細胞はすべてIL-6-/-マウス由来であるためIL-6産生能を完全に欠くが、T細胞、抗原提示細胞はその大半がμMTマウス(B細胞以外は正常)由来であるためIL-6産生能がほぼ正常である。同様の手法で、B細胞特異的IL-10欠損マウスも作成した。FACSで確認したところB細胞特異的IL-6欠損マウスではB細胞のみIL-6産生が認められず、B細胞特異的IL-10欠損マウスではB細胞のみIL-10産生が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
強皮症モデルマウスの実験予定であったが、マウスの繁殖が当初の予定通りすすまなかったため実験計画よりもややおくれている。
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今後の研究の推進方策 |
強皮症モデルマウスは、ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスを使用する。このモデルはブレオマイシンを連日皮内投与することにより皮膚ならびに肺の線維化が誘導される。B cell-IL-6-/-(B細胞特異的IL-6欠損)マウスならびにB cell-IL-10-/-(B細胞特異的IL-10欠損)マウスにブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスを惹起し比較検討する。評価方法は、コントロール群とB cell-IL-6-/-マウス群、B cell-IL-10-/-マウス群の背部皮膚ならびに肺での線維化を比較検討する。線維化の定量にはシリウスレッド法およびハイドロキシプロリンのELISA法によって組織中のコラーゲンを定量する。IL-6産生Effector B細胞を欠損したB cell-IL-6-/-マウスでは、線維化が減弱し、IL-10産生Regulatory B細胞を欠損したB cell-IL-10-/-マウスでは線維化が亢進することが予想される。また、線維化組織での細胞浸潤(T・B細胞、マクロファージ、線維芽細胞)の検討、real-time PCRによるサイトカインプロファイルの解析を行う予定である。 さらに、IL-6産生Effector B細胞、IL-10産生Regulatory B細胞の作用機序を解明するために、それぞれの細胞を分離し、in vitroでnaive CD4+T細胞、抗原提示細胞、線維芽細胞と共培養しその作用機序を解析する。IL-6産生Effector B細胞は、IL-6産生を介してnaive CD4+T細胞をTh17細胞へ分化・誘導することが予想される。一方、IL-10産生Regulatory B細胞はnaive CD4+T細胞をregulatory T細胞へ分化・誘導することが予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマウスの繁殖が予定通り、進まなかったため実験計画に遅れが生じ使用額が予定以下となった。予定していた支出のうち、マウス維持費などが支出されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在、マウスの繁殖は予定通りすすんでおり次年度に実験を多く行うため、次年度研究費とあわせてフローサイトメトリー試薬やマウス維持費に使用する予定である。
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