研究課題/領域番号 |
16K10148
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
猪爪 隆史 山梨大学, 総合研究部, 講師 (80334853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PD-1 / TIGIT / LAG-3 / CD155 / MHC classII |
研究実績の概要 |
新規免疫チェックポイント分子の有力候補であるTIGITとLAG3について、PD-1との同時阻害による相乗的T細胞活性増強効果が期待出来るか、を検討するために以下の実験を行った。1、健常人末梢血リンパ球よりメラノーマ抗原(MART-1)特異的人工 T細胞を作成し、それぞれ複数のMART-1抗原を発現したメラノーマ細胞株と共培養刺激を行った。刺激後24,48,72時間後までのPD-1、TIGIT, LAG-3の発現レベルの経時変化をフローサイトメトリーにて確認した。その結果、これら4つの分子が刺激後に発現されるタイミング、また刺激後に発現が維持される時間、はほぼ同じであることが確認された。2、メラノーマ細胞をIFNgで刺激した後のPD-L1, CD155, MHC class IIの発現レベルの経時変化をフローサイトメトリーにて確認した。その結果、これらの分子が刺激後に発現されるタイミング、また刺激後に発現が維持される時間はほぼ同じであることが確認された。3、メラノーマ特異的T細胞とメラノーマ細胞株の共培養にPD-1、TIGIT, LAG-3それぞれのシグナルを阻害する抗体を添加し、T細胞の活性が相乗的に増強されるかどうかを検討した。その結果、抗PD-1抗体、抗TIGIT抗体, 抗LAG-3抗体添加によってT細胞抗腫瘍活性が相乗的に増強された。メカニズムとして、これら3つの抑制シグナルが協調的にT細胞受容体シグナルを抑制していることも明らかにした。ここまでの結果を、米国研究皮膚科学会や日本研究皮膚科学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は予定していた実験のほとんどを達成した。未達成の実験は以下の通りである。ヒトメラノーマ腫瘍検体の浸潤T細胞を使用した同様の解析は、臨床検体の不足により、予定よりは遅れている。また、PD-1シグナル、TIGITシグナル, LAG-3シグナルの相互干渉の解明についても、T細胞受容体Zap70経路以外の解析を行う必要がある。平成29年度以降の課題であるPD-1シグナル阻害、TIGITシグナル阻害, LAG-3シグナル阻害の相乗効果をin vivoで検討する実験の準備(モノクローナル抗体の作成、実験系の確立)はほぼ、終了した。
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今後の研究の推進方策 |
メラノーマに対する新規免疫チェックポイント阻害療法を開発するために、今後は以下の検討を行う。平成28年度に人工T細胞で確認したPD-1シグナル、TIGITシグナル, LAG-3シグナルの相互干渉や同時に阻害した場合の相乗的なT細胞活性化が、ヒトメラノーマ腫瘍浸潤リンパ球でも観察されるかどうかを検討する。さらに新規治療開発に向けて、マウスモデルでの阻害抗体投与実験を実施する。マウスメラノーマを抗マウス抗体で治療するモデルと、免疫不全マウスにヒトメラノーマを植えて、抗ヒト抗体で治療するモデル、それぞれを実施する。これらの実験は共同研究施設から設備面、技術面で補助を受けながら実施してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト検体を用いた実験は平成28年度の検体数が予定より不足したため、この実験のための額が平成29年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していて完遂できなかった実験で使用予定であった額を、そのまま平成29年度の実験に当てる。
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備考 |
http://www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/dermatol/
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