本研究は、時として原因薬剤の同定が困難な重症薬疹の原因薬剤の同定や病態解明を目的としている。 これまでに重症薬疹の病変部皮膚生検組織より、インターロイキン2および抗CD3/CD28抗体付着ビーズを用いて培養した皮膚浸潤T細胞の薬剤反応性を利用して、原因薬剤の同定を試みている。ほぼ全例で皮膚からのT細胞培養に成功し、原因薬剤の添加によるサイトカイン産生や細胞増殖につき検討した。調べ得た症例の一部では、原因薬剤及び抗原提示細胞の添加によって、インターフェロンガンマなどの、サイトカイン産生がELISPot法で確認された。また、CFSEを用いた細胞増殖試験では、CD4陽性及びCD8陽性T細胞の両者が反応性を示した。さらに、一部の症例では、抗原提示細胞を加えなくても、原因薬剤の添加のみでELISPot法でインターフェロンガンマ産生が確認された。 皮膚浸潤T細胞の薬剤反応性を調べる過程で、ステロイド抵抗性を示す細胞が確認され、その頻度および機能についても一部で解析を行った。これらの細胞はin vitroで、特に高IL-2濃度下でステロイド抵抗性を示した。さらに、これらの細胞はステロイド治療をすでに受けている患者から得られた培養皮膚T細胞の中に多い傾向があり、ステロイド治療中にステロイド抵抗性を示す遺伝子が誘導された、またはステロイド治療により、ステロイド反応性の細胞が抑制され、結果としてステロイド抵抗性の細胞が選択されていった可能性が、考えられた。
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