研究実績の概要 |
本年度は、対象となる重傷薬疹の症例がなく、これまでに保存された検体を用いた解析が中心となった。原因薬剤同定の試みは既になされていたことから、皮膚浸潤T細胞のステロイド抵抗性に関わるMDR1(Multiple drug resistance 1または P-glycoprotein,ATP-binding Cassette Sub-family B Member 1)発現やその機能についての解析を行った。 薬疹の治療には副腎皮質ステロイドを用いることが多く、その投与量は薬疹の病型、患者の体重、原因薬剤の中止時期などの要素から決定されることが多いが、発症時に既に別の疾患の治療としてステロイドを使用している症例では、そうでない症例より多くのステロイドを要すると考えられている。しかし、その根拠はあきらかでない。 私たちは、すでにステロイドを投与中の患者では、末梢血中のT細胞などのMDR1発現が高く、ステロイド抵抗性をあらかじめ有していることから、治療にはより多くのステロイドを要するのではないかと仮説を立て、薬疹の主たるエフェクター細胞と考えられている皮膚に浸潤したT細胞のMDR1発現につき検討した。 その結果、薬疹の発症時に既にステロイドを使用していた場合には、そうでない場合に比べて皮膚浸潤T細胞のMDR1発現はより高い傾向にあったが、ステロイドを使用していなくても高率にMDR1を発現している場合もあり、統計学的な有意差は認められなかった。
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