研究課題/領域番号 |
16K10152
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
飯田 真智子 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 障害モデル研究部, 研究員 (60465515)
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研究分担者 |
加藤 昌志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10281073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 白斑 |
研究実績の概要 |
白斑とは、メラニンを産生する皮膚メラノサイトが消失し皮膚がまだら状に白くなる皮膚疾患である。白斑は様々な原因により誘発されるが、ある特定の化学物質も白斑発症原因の1つである。化学物質による白斑被害としては化学工場の従業員に発症した職業性白斑が知られる。また、2013年には、美白剤使用による白斑被害が大きな社会問題となった。美白成分のうち、ロドデノールが白斑発症の原因化合物であることが報告された。ロドデノールを含む美白剤の使用により白斑を発症した人は、当該美白剤を使用した人の約2%にとどまることから、化学物質よる白斑発症に対してより敏感な人が存在すると考えられる。今後、このような化学物質による白斑被害を未然に防ぐためには、白斑を発症しやすい人を対象とした、より高感度な白斑毒性評価システムの開発が求められる。そこで、本研究では、当研究室にて開発されたヒト類似皮膚を持つオリジナルモデルマウスを用い、化学物質による白斑毒性を高感度に感知できる評価法を開発することを目的とした。昨年度までに、オリジナルモデルマウスを用いた評価系において、ロドデノールによる白斑毒性を高感度に再現させることに成功した。また、白斑発症皮膚における、メラノサイト・メラニンの分布、および、メラノサイト関連分子の発現を免疫組織学法およびメラニン特殊染色により解析した。本年度は、これらの研究成果を国際論文として公表することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、モデルマウスを用いた白斑毒性評価に成功し、国内特許(特願2016-104698)およびJST支援による国際特許出願(PCT出願(PCT/JP2017/017957)に至っている。本年度は、集大成として本研究成果の国際論文発表を目指す。昨年度より、国際科学雑誌への投稿を進めてきたがレビューまで回るもののその結果は不採択であった。そこで、審査員からのコメントを参考に、メラノサイト関連分子の発現解析、および、データ解析法の再検討を行い、そのデータを論文に纏め再投稿した。現在、ある国際雑誌のリバイスの段階まで来ている。リバイス実験は、白斑が誘導された皮膚領域におけるメラノサイト関連分子の発現およびその判定量解析を中心に行う予定である。メラノサイト関連分子の検出方法はすでに確立しており、研究期間内に実験を完了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究期間を1年延長し、本研究成果を論文として公表することを目標とする。現在、ある国際科学雑誌のリバイス対応段階である。より正確な解析結果論文として公表するため、必要に応じて組織解析を中心とした追加実験を行う。モデル動物からの皮膚サンプルはすでにパラフィンブロックとして保管してあるため、組織切片の作製ならびにメラノサイト関連抗原を標的とした免疫染色を行う。またその結果を画像解析ソフトWinROOF (Mitani Corp., Japan)を用いて半定量的に解析し、統計解析(JMP Pro (version 11.0.0; SAS Institute))によりデータの信頼度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科学雑誌への投稿を進めてきたが採択に至らず、追加実験の必要があったため次年度使用額が生じた。本研究は、化学物質の皮膚毒性を感度良く評価するための試験系である。より精度の高い研究成果を得ることは、人々の化学物質による白斑毒性を精度よく未然に検知するために必要であった。以上の理由により、次年度に繰越した予算は、追加実験で使用する実験消耗品、英文校正、論文投稿料、論文採択後の学会発表参加費等に使用する予定である。
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