研究課題
カルシウムイオン(Ca2+)は、細胞内情報伝達物質の1つで、神経伝達物質やホルモンの放出、神経細胞の電位調節、細胞の分化や増殖、小胞の輸送、発汗、痛みの調節など種々の作用を有する。しかもこれら作用はmTORC1により調節されている。Ca2+チャネルは、イノシトール3リン酸(IP3)受容体で調節され、IP3受容体を活性化する。IP3はPI3K-Akt-mTORC1経路の活性やオートファジーの形成、シナプス小胞輸送、および発汗調節に関与する。そこで、mTORC1の恒常的活性でおこる結節性硬化症(TSC)の、てんかん、自閉症、認知障害、発汗異常などの症状は、いずれもmTORC1で調節されるIP3受容体を介したCa2+チャネルという共通の機構に基づくと考え、この神経精神症状と発汗や痛みに共通の機序の解明をめざした。昨年度は、自閉症を呈するTSCモデルマウスを用いて、末梢神経の温痛覚に対するシロリムスの効果をプランターテストとマウス脳MRIによるカルシウムinflux、及び、TSC2ノックアウトアストロサイトを用いて検討した。その結果、TSCモデルマウスはワイルドタイプに比して痛覚過敏で、痛み中枢のcalcium influxが亢進しておりシロリムスがこれらを抑制する事が確認できた。今年度はまず発汗とmTORとの関係及びシロリムスの発汗に対する影響を調べるた。正常マウスにシロリムスを内服させると有意に発汗量が減少するが投薬中止10日で、通常の発汗量に戻る事、更にシロリムスゲルを単回塗布することにより、濃度依存性に発汗量が減る事を確認した。マウスパッドの汗腺部では発汗時にはmTORが活性化している事を確認した。TSC1/2モデルマウスとコントロールマウスの比較では、TSC1/2モデルマウスでは発汗量の増加傾向は見られたが、有意差は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
実験の順番がかわったり、方法が少し最初の計画と異なったりはしているが、全体としてはほぼ順調である。
前年度の痛覚異常を呈し、中枢でcalcium influx の亢進を呈したマウス及び今年度発汗異常と同時に中枢に異常を認めたマウスの脳の組織切片を用いて、mTORC1が活性化されている部位をp-mTOR, S6K,FOSなど様々の抗体を用いて調べる。
外注検査や遺伝子組み換えマウスの作成は仕事が完了時に支払いが生じる。従って検査の結果が戻ってきたときあるいは組み替えマウスが成功したときに其々の支払いが生じる。従ってその部分は次年度支払いに回ってくる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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