研究課題/領域番号 |
16K10156
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
錦織 千佳子 神戸大学, 医学研究科, 教授 (50198454)
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研究分担者 |
永井 宏 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80335447)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 白斑 / ロドデノール / UVB / 小胞体ストレス / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
これまで、培養ヒト表皮色素細胞を用いて、UVB照射によるロドデノール (RD)の細胞障害性の増強のメカニズムを検討してきた。 はじめに、RD 0.72 mM存在下にUVB 20 mJ/cm2を照射する条件下ではそれぞれ単独では色素細胞障害性がみられなかったが、両者が加わると色素細胞障害性がみられた。RD+UVB群ではアポトーシスの誘導が増強し、小胞体(ER)ストレス誘導性アポトーシスのメディエーターであるC/EBP homologous protein (CHOP) mRNAの発現が増強していた。ERストレス阻害剤投与にて、UVB照射によるRDの細胞障害性増強効果は軽減した。また、RD+UVB照射群では有意にIL-8産生量が増加していた。小胞体ストレスの主要な経路の検索では、RD+UVB照射群ではactivating transcription factor 4(ATF4)、spliced X-box binding protein 1 (sXBP-1)のmRNA発現増強がみられた。また、RD+UVB照射群では細胞内活性酸素産生量増加を認め、代表的な抗酸化剤であるN-acetylcysteine投与下ではcaspase3/7活性は抑制され、CHOP mRNAの発現増強を軽減していた。 これまで培養ヒト表皮色素細胞を用いた実験系において、UVB照射は細胞内酸化ストレスの増大を引き金とし、小胞体ストレスを介したアポトーシス誘導の機序により、RDの色素細胞障害性増強をもたらすことを示してきた。 RD誘発性白斑のさらなる病態解明のため、神戸大学附属病院皮膚科でロドデノール白斑と診断され外来通院中の患者血液からiPS細胞を樹立した。末梢血から単核球を分離し、Plasmidセンダイウイルスを用いてマウス胎仔線維芽細胞上あるいはフィーダーフリー条件下で遺伝子導入し、iPS細胞を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
UVB照射がロドデノールのメラノサイト障害性を増強する機序の解明をすすめることに時間、費用を費やし、他の美白剤に対する影響の検討がすすめられていない。また、樹立されたiPS細胞から色素細胞への分化誘導が円滑に進まず、iPS細胞由来のメラノサイトを用いた実験系がまだ実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
RD誘発性白斑患者末梢血および健常者末梢血から樹立されたiPS細胞から、色素細胞へと分化誘導を行う。 RDと同様にチロシン類似の構造式を有するチロシナーゼ活性抑制物質(RDに、加え、ハイドロキノン、アルブチン、ルシノール、コウジ酸)の色素細胞障害性を、ロドデノール患者色素細胞と健常色素細胞とで比較する。チロシナーゼ活性抑制物質としては、RD以外にハイドロキノン、アルブチン、ルシノール、コウジ酸を用いる。細胞障害性に差が出れば、これまでの研究に準じてアポトーシス、小胞体ストレス、細胞内活性酸素の評価を行う。また、酸化ストレスを誘導する因子として、紫外線照射あるいは過酸化水素添加がこれらの障害性に影響を与えるかどうかを検討する。 色素細胞障害性に影響を与える化学物質を選別し、患者色素細胞と健常色素細胞での遺伝子発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
樹立されたiPS細胞から色素細胞への分化誘導が円滑に進まず、iPS細胞由来のメラノサイトを用いた実験系に遅れが生じたため、予定した試薬を次年度に繰り越して実験を進める。
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次年度使用額の使用計画 |
予定したiPS細胞からメラノサイトへの分化誘導とそれを用いた実験に繰り越し分の経費を充当する。
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