研究課題/領域番号 |
16K10161
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
高石 樹朗 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (10303223)
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研究分担者 |
佐野 栄紀 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (80273621)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 間葉ー上皮移行 / がん抑制 |
研究実績の概要 |
我々は、人工多能性幹細胞(iPS 細胞)作成に用いられる再プログラミング因子を悪性腫瘍細胞に導入すること により、間葉-上皮移行(Mesenchymal to Epithelial transition; MET)が誘導され、がん悪性度が減弱化することを見いだした。しかしながら、この現象を説明する分子機構は不明である。従って本研究では、この現象に参画しかつ重要な役割を担う分子を同定することを目的とする。MET誘導、がん抑制に関わる分子機構が明らかになれば、がん抑制に対する新たな観点を提示し、新規のがん治療法の開発に貢献できる可能性がある。 有棘細胞癌親細胞株と比較してRICs で共通して変動する転写因子をコードするmRNA あるいはlncRNA を解析する。これまでの研究成果から、RICs で発現亢進しているもの、発現抑制されているもの、それぞれ10 ほどの候補因子を得ている。再プログラミング因子導入により間葉-上皮移行(MET)を生じた腫瘍細胞で発現が増加する長鎖ncRNAをトランスポゾンベクターに組み込んだ。この長鎖ncRNAはメラノーマRICsにおいても親細胞と比較して発現が増加していた。メラノーマ1株を含む4種類のヒト腫瘍細胞にこのベクターを導入し、nc RNA安定高発現細胞株を得た。これらの細胞はMET様の形態的変化を示し、遺伝子の発現変化も確認した。他の候補遺伝子についても発現コンストラクト作製を順次行い安定発現細胞を得る予定である。 メラノーマにおいては様々な情報伝達経路が増殖、浸潤、転移に関わっていることが知られている。中でもRaf-MEK-ERK経路あるいはPI3K-AKT-mTOR経路は臨床的意義から以前より着目されている。メラノーマRICsにおいてこれら経路の変化を確認したところ、MEK、ERK、およびAKTのリン酸化が著しく減少しており、RICsにおける悪性度減弱化に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度に予定していたncRNAが導入されてMETを生じた腫瘍細胞に関するIn vitroでの検討、すなわち分化マーカの発現変化、細胞増殖、移動能、浸潤能などが実施不十分であった
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今後の研究の推進方策 |
ncRNAが導入により変化した特徴をIn vitroおよびIn vivoでの検討で明らかにする。MET誘導に関わる他の候補遺伝子の解析も並行して行う予定である。
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