研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)患者ではペリオスチン(PO)の発現が皮膚で亢進しており、血清値と重症度との間に相関がみられる。本研究ではADを中心としたそう痒性皮膚疾患におけるPOの発現異常とセマフォリン3A(Sema3A)、神経成長因子(NGF)といった神経関連因子および各種炎症性サイトカイン異常との関係について明らかにし、そう痒性疾患の新規治療薬の開発を目指した。さらにADにおける新規バイオマーカーを探索した。 1)培養ヒト線維芽細胞およびケラチノサイトをリコンナントPOで刺激し、Sema3A、NGFの産生をみたところ、いずれの細胞も一定の傾向はあったものの有意な変化をみなかった。また末梢血に POとLPCとの共刺激を加え培養したところ、AD患者では健常人と比べてIL-18とTNF-αのmRNAの発現が上昇した。PO受容体であるインテグリンαの発現増加率はAD患者の末梢血で高かった。以上よりADにおけるPOの炎症増強作用が推察されたがかゆみ神経との関係は明らかにされなかった。 2)コラーゲントリペプチド(CTP)のADにおける効果を培養ケラチノサイトと線維芽細胞でみた結果、TSLP、TARC/CCL17、 MDS/CCL22の産生が低下したがSema3AとNGFについては有意な変化はみられなかった。AD患者にCTP製剤を12週間経口投与したところ、痒みやSCORAD, TARC値に有意な低下をみた。以上より、CTPはADの治療に有用であることが示唆された(J Dermatol Sci 2017)。 3)ケラチンサイトが産生するSCCA2は ADの重症度や慢性化および治療効果予測のバイオマーカーとして使用可能であることを示した (Allergol Internatioal 2018)。
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