研究課題/領域番号 |
16K10170
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
深井 和吉 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 登録医 (20244642)
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研究分担者 |
國本 浩之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80372853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 白皮症 / ケミカルシャペロン / 小胞体 |
研究実績の概要 |
遺伝性疾患の治療戦略として、遺伝子治療、酵素補充療法、リードスルー効果を利用した治療法などが試みられている。ケミカルシャペロン治療は、最近Gaucher病で臨床応用されている治療法で、酵素補充療法では効果がない脳神経症状にも効果が期待できる点で画期的である。リソゾーム酵素をコードする遺伝子のミスセンス変異体は、小胞体でミスフォールディングを起こし、小胞体に留まっていることで、酵素活性を生じない。そこにケミカルシャペロンを加えることで、タンパクの三次構造を正常化し、酵素活性を復活させるというアイデアである。今回、チロシナーゼのミスセンス変異体でこのような効果が期待できるのかどうかを検討した。チロシナーゼP431L変異体は、チロシナーゼ阻害薬数μモルの低濃度で、チロシナーゼ活性が復活することをin vitroの系で確認した。また、この時、ERに存在していたチロシナーゼは、ケミカルシャペロンの添加によって、ERから移動して、細胞質の末梢部分にglobular patternで存在し、おそらくライソゾームに分布していると思われる像を共焦点顕微鏡により観察出来た。一方、R77Q、H211Y、D383Nのミスセンス変異では、ケミカルシャペロン添加により、チロシナーゼ活性の復活は観察されず、また共焦点顕微鏡でもチロシナーゼタンパクの移動は観察出来なかった。このことから、P431Lのミスセンス変異による白皮症患者では、ケミカルシャペロン投与によって、酵素活性が回復することが期待される。このケミカルシャペロンは低分子であるので、おそらく脳血液関門を通過する可能性があり、酵素補充療法では期待できない、視力回復も将来的には可能になりうることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、期待通りの成果がでている。研究の進捗状況は良好と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、P431Lのチロシナーゼ変異を導入したマウスモデルを作成中。このマウスができれば、in vivoにおいて、このケミカルシャペロン効果によって、色素の回復、視力回復が可能かどうかを検証することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に経過しており、マウスモデルの作成と解析に相当の金額を要することが見込まれるため、今年度の支出を抑えたため次年度使用金額が生じている。今後マウスモデルでの解析に使用する予定である。
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