研究実績の概要 |
【目的】眼皮膚白皮症は皮膚・毛髪・眼のメラニン色素生成が低下または消失する常染色体劣性遺伝性疾患である。日本人眼皮膚白皮症1A型のミスセンス変異であるR77Q,H211Y,R239W,D383N,P431L変異についてこれらの変異チロシナーゼがER-retentionを起こしているかどうかを検討後、ER-retentionを改善するケミカルシャペロン効果を利用した眼皮膚白皮症の治療法の開発を目的とする。 【方法】①レンチウイルスベクターを用いチロシナーゼ野生型及び日本人眼皮膚白皮症1A型のミスセンス変異をHeLa細胞に導入し定常的に発現させ、チロシナーゼの局在をウエスタンブロット及び共焦点レーザー顕微鏡による観察で調べた。②チロシナーゼの競合阻害剤であり、美白剤として使用されているデオキシアルブチンを①で作成したHeLa細胞に投与し、チロシナーゼ活性を測定した。 【結果】①日本人眼皮膚白皮症1A型のミスセンス変異のうち、H211Y変異体は小胞体とシスゴルジ体の両方に存在し、他の変異体は小胞体にのみ存在していた。②P431L変異体にデオキシアルブチンを20μM投与した際、チロシナーゼ活性が有意に上昇した。 【結論】①日本人眼皮膚白皮症1A型のミスセンス変異(R77Q, R239W, D383N, P431L)チロシナーゼ活性が消失している病態生理は、小胞体にチロシナーゼが蓄積し、ゴルジ体に輸送されずにそのタンパク活性が消失する、“ER-retention”であると考えられた。②H211Yミスセンス変異のチロシナーゼでタンパク活性が消失する病態生理には“ER-retention”以外にもあると考えられた。③デオキシアルブチンはケミカルシャペロン効果を示し、ケミカルシャペロン療法が眼皮膚白皮症1A型の治療法として有用であると考えられた。
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