研究課題
皮膚毛包上部には神経幹細胞マーカーのネスチンを強く発現する毛包幹細胞が分布している。毛包幹細胞は神経細胞やグリア細胞などへの多分化能を有し、最近、心筋細胞への分化能も持つことが明らかとなった。心臓疾患は世界でも死因上位としてあげられる。近年、ES細胞やiPS細胞等の幹細胞から分化誘導して作成された心筋シートは心機能の再生に有効であると報告され、心臓疾患に対する新たな治療法として再生医療に期待が高まっている。本研究では、マウス髭毛包を用いて毛包幹細胞由来心筋細胞の臨床応用への可能性を検討した。我々は、ヒトの頭部毛包から分離した毛包幹細胞 (human HAP (hHAP) stem cells) を用いて、心筋細胞への分化能を明らかにした。さらに我々は、polyvinylidene fluoride membrane上で毛包幹細胞を培養し、末梢神経損傷部の再生を誘導することに成功し、現在、脊髄損傷部の再生実験を行っている。移植可能なヒト頭部毛包由来の心筋シートの作製と、脊髄損傷部に移植可能な毛包幹細胞を組み込んだバイオマテリアルシートの作製、さらに移植後の安全性の確認を行っている。本研究成果は有効な治療法の存在しない心機能低下患者への拍動する心筋シートを用いた再生医療と、脊髄損傷部の再生医療につながると考える。hHAP stem cellを用いた再生医療は、皮膚という最も採取しやすい部位に分布している毛髪から簡便な方法で採取、利用することができる。また、hHAP stem cellを用いた再生医療の臨床応用においては、自己の毛包幹細胞を活用することができるため、拒絶反応の問題が少なく、他の生体幹細胞、iPS細胞やES細胞と比較して、腫瘍化の危険性が少なく、倫理面の縛りを受けず、安全性の高い治療法になることが期待される。
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Stem Cell Reviews and Reports
巻: 15 ページ: 59-66
10.1007/s12015-018-9856-3.