研究課題
自己免疫性水疱症における自己抗体の標的タンパクに注目すると、それらは細胞骨格蛋白や細胞接着因子であることが本疾患の大きな特徴の一つである。本研究は天疱瘡および類天疱瘡群のまだ解明されていない基礎的研究を完成し、自己免疫性水疱症における診断システムが発展することに寄与するための基盤となる研究を行うことである。平成28年度における主だった研究概要を記述する。1)抗BP230抗体のみを検出するBPの臨床的特徴として、1) 軽症、2) 紅斑が少ない、3) 特殊型(特に限局型)が多い、4) 組織で好酸球が少なくリンパ球が多い、5) 治療への反応性が良好である点などが示唆された。またBP230 のN, M, C領域に細分したリコンビナント蛋白質を用いた免疫ブロット法ならびにELISA法を施行し、免疫学的解析を行った。その結果、《抗BP180抗体と抗BP230抗体両方陽性群》はBP230-N, M, C領域すべてに反応するのに対し、《抗BP230抗体単独陽性群》はBP230- C端側の領域に高率に反応する傾向を示した。このことよりいわゆる抗BP230抗体単独陽性のBPは、BP230- C領域に特異的に病因エピトープを有していることが示唆された。抗BP180抗体を検出するBPの抗BP230抗体の意義はエピトープスプレッディングにより検出する機序を推察するが、抗BP180抗体を検出しない抗BP230抗体単独陽性のBPでは、それとは異なった機序を推察する。2)大腸菌で作製したBP180 C末端部領域の組み換えタンパクを基質としたELISA法を開発し、MMP患者で有意に陽性を示した。これらの研究結果は種々の類天疱瘡群疾患における正確な診断および適切な治療の選択に大いに役立つものである。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度の研究計画に挙げていた水疱性類天疱瘡におけるBP230抗体に関する研究において、新知見が得られ、疾患に関する研究の発展のみならず、診断/治療に大きく貢献できることが期待できた。これまでのところ、交付申請書のタイムテーブルにほぼ沿う形で進行している。
多くの症例に対する抗原抗体解析の継続とともに、各種検査法における有用性を慎重に検討を行う。また抗原抗体解析の結果を総合的に患者背景および臨床学的特徴の検討を行い、研究の推進をしていく予定である。臨床解析の結果を総合し、天疱瘡における発症メカニズムの理解を深め、新たな治療へのアプローチに寄与することを目的とする。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件)
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