研究課題
自己免疫性水疱症における自己抗体の標的タンパクに注目すると、それらは細胞骨格蛋白や細胞接着因子であることが本疾患の大きな特徴の一つである。本研究は天疱瘡および類天疱瘡群のまだ解明されていない基礎的研究を完成し、自己免疫性水疱症における診断システムが発展することに寄与するための基盤となる研究を行うことである。平成29年度における主だった研究概要を記述する。1)腫瘍性天疱瘡(PNP)は、悪性リンパ腫を含むリンパ増殖性障害に一般に関連する、まれで致命的な自己免疫性水疱症である。 PNPに関連するリンパ増殖性障害は、重篤な肺の合併症である閉塞性細気管支炎(BO)に関連することがある。その希少性のために、PNPの管理に関するガイドラインは確立されていない。さらに、ほとんどの患者は1年以内に死亡する。化学療法を用いたリンパ腫関連PNPおよびBOの治療奏功例の抗原抗体解析を行った。2)自己免疫性水疱症のひとつである線状IgA水疱性皮膚症の臨床および抗原抗体解析の統計学的検討を行った。線状IgA水疱性皮膚症の自己抗体の多様性が示された。約半数にIgG抗体の検出が認められたが、IgG抗体保有群の患者と他の群の患者との間に臨床的徴候の統計的差異は見出されなかった。3)水疱性類天疱瘡におけるIgE抗体の意義について、臨床統計および蛍光抗体法・ELISA等用いて検討を行った。IgEクラス自己抗体の病態への関与は不明であったが、BP180とBP230のIgGおよびIgE ELISAの結果は相関していた。IgGおよびIgE抗BP180抗体は疾患活性と相関したが、IgGおよびIgE抗BP230自己抗体では相関性は見いだせなかった。IgE抗BP230自己抗体は、結節性表現型と相関した。これらの研究結果は種々の自己免疫性水疱症における正確な診断および適切な治療の選択に大いに役立つものである。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の研究計画に挙げていたA2ML1,エピプラキンに関与する腫瘍随伴性天疱瘡における抗原抗体解析において、新知見が得られ、疾患に関する研究の発展のみならず、診断/治療に大きく貢献できることが期待できた。これまでのところ、交付申請書のタイムテーブルにほぼ沿う形で進行している。
多くの症例に対する抗原抗体解析の継続とともに、各種検査法における有用性を慎重に検討を行う。また抗原抗体解析の結果を総合的に患者背景および臨床学的特徴の検討を行い、研究の推進をしていく予定である。臨床解析の結果を総合し、天疱瘡における発症メカニズムの理解を深め、新たな治療へのアプローチに寄与することを目的とする。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (29件) (うち国際共著 5件、 オープンアクセス 27件、 査読あり 24件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
日皮会誌
巻: 127(7) ページ: 1483-1521
皮膚科の臨床
巻: 59(11) ページ: 1629-1639
西日本皮膚科
巻: 79(2) ページ: 176-183
巻: 79(4) ページ: 386-390
Visual Dermatology
巻: 16(9) ページ: 877-879
Br J Dermatol
巻: 177(1) ページ: 152-157
J Dermatol
巻: 44(2) ページ: 189-193
巻: 44(11) ページ: e300-e301
Actas Dermosifiliogr
巻: 108(1) ページ: e1-e5
J Invest Dermatol
巻: 137(12) ページ: 2462-2464
巻: 177(1) ページ: 141-151
巻: 176(1) ページ: 168-175
JAMA Dermatol
巻: 153(1) ページ: 15-17
Exp Dermatol
巻: 26(9) ページ: 811-819
巻: 177(1) ページ: 16-17
巻: 44(12) ページ: 1417-1418
J Eur Acad Dermatol Venereol
巻: 31(1) ページ: e47-e49
巻: 44(9) ページ: e222-e223
Int J Hematol
巻: 106(6) ページ: 852-859
J Dermato
巻: 45(4) ページ: 472-474
Eur J Dermatol
巻: 27(2) ページ: 192-193
巻: 176(5) ページ: 1406-1409
巻: 44(11) ページ: 1295-1298
巻: 44(4) ページ: 461-464
巻: 31(11) ページ: e508-e510
巻: 27(6) ページ: 664-665
巻: 177(6) ページ: 1683-1692
Clin Exp Dermatol
巻: - ページ: -
Acta Derm Venereol
巻: 97(1) ページ: 24-31