研究課題
統合失調症の症状の一つに認知機能(注意、学習、記憶など)障害がある。脳内コリン系は認知機能の中核を担っており、とりわけα7ニコチン様アセチルコリン受容体(a7nAchR)が重要な役割を担っている。統合失調症の治療薬はドパミン受容体遮断の薬理作用をもち、主に陽性症状に効果が見られるが、陰性症状や認知機能障害に対して効果が乏しかった。最近、アセチルコリン受容体のサブタイプの一つであるα7ニコチン様アセチルコリン受容体アゴニストが統合失調症の陰性症状や認知機能障害に効果があることが報告されている。しかし、そのメカニズムは不明である。これまで脳内α7ニコチン様アセチルコリン受容体計測は手法上不可能であったが、近年同受容体に特異的なPETトレーサーが開発され計測が可能となった。そこで本研究は、脳内におけるα7ニコチン様アセチルコリン受容体の計測、および、詳細な認知心理学的検査により、脳内におけるα7ニコチン様アセチルコリン受容体異常が統合失調症の生物学的要因と仮定し、PETを用いて統合失調症者のα7ニコチン様アセチルコリン受容体と臨床症状(主に陰性症状と認知機能障害)との関連を明らかにすることを目的とする。本研究の最終目的は、この考察をふまえた新規統合失調症治療薬の開発、更にはα7ニコチン様アセチルコリン受容体の画像検査を用いた統合失調症の早期発見に資する点にある。成人統合失調症者20 名、および、それらと年齢・性別・知能指数を適合させた健常対照者20 名を対象とする。統合失調症の臨床評価をPANSS、CogState、WAIS-IIIによりそれぞれ評価した後、α7ニコチン様アセチルコリン受容体の特異的トレーサー[11C]Me-QAAを用いたPET計測を行う。
2: おおむね順調に進展している
UMIN(000024180)に登録後、被験者募集を開始した。平成30年3月現在、健常者は16名、統合失調症患者は7名がすでにPET撮像と認知機能評価を終え、大きな問題は生じていない。研究はおおむね順調に進展している。
平成29年度と同様、健常対象者および統合失調症者のリクルートを行い、PET撮像および認知機能評価を遂行していく。統合失調症者が10名を超えた段階で、予備的統計解析を行う予定でいる。
(理由)予定よりも被験者数が少なかったため(使用計画)PET撮像にかかる費用、および、被験者の謝金に使用していく。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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