研究課題/領域番号 |
16K10189
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山形 弘隆 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10549934)
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研究分担者 |
松尾 幸治 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00292912)
内田 周作 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10403669)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Glycosylation / Depression |
研究実績の概要 |
うつ病の診断は、未だ症状の組み合わせから判断する操作的診断法しかなく、客観的で簡便なバイオマーカーの発見が切に望まれている。糖鎖は神経機能の調節などにおいて重要な役割を果たしていることが知られており、精神疾患との関連も示唆されているが、糖鎖とうつ病の関係はほとんど明らかになっていない。我々は、うつ病患者および慢性ストレス負荷うつ病モデルマウスの血漿を用いたレクチンアレイ解析から、α2-6結合シアル酸を持つ糖鎖に特異的に結合するレクチン(SSA, SNA, TJA-I)の結合性が抗うつ効果やストレス反応によって変化することを発見した。そこで、うつ病患者白血球から抽出したRNAを用いて、8種類のα2-6結合シアル酸トランスフェラーゼ(ST6GAL1-2、ST6GALNAC1-6)の発現変化を調べたところ、寛解期うつ病患者のST6GALNAC2の発現が、うつ病期うつ病患者よりも減少していることが分かった。次に、アフィニティクロマトグラフィーを用いて、複数の異なる条件下でTJA-Iに結合する糖タンパク質精製を試みた。株式会社J-オイルミルズより提供いただいた精製TJA-Iタンパク質をリガンドとしてNHSビーズにカップリングさせた後に健常者血漿と反応させた。十分洗浄を行った後にラクトースと競合させてTJA-I結合タンパク質を溶出した。溶出したタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離させた。銀染色法を用いて溶出タンパク質を検出したところ、複数のバンドが同定できる条件が分かった。今後、患者サンプルと健常者サンプルとの比較を行い、うつ病患者特異的なバントを同定したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の目標は主に2つであり、①レクチン結合タンパクの同定と②糖鎖付加酵素の発現解析である。①については、レクチンの一つであるTJA-Iから、マーカー候補となる糖タンパク質を精製することが出来た。②については、うつ病患者白血球RNAを用いて、各α2-6結合シアル酸トランスフェラーゼ発現解析を行い、寛解期うつ病患者でST6GALNAC2が減少することを発見した。うつ病評価のためのバイオマーカー同定までは至っていないが、研究初年度の進捗としては、概ね順調だと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
抗体オーバーレイ・レクチンマイクロアレイ法でうつ病患者血漿をブロットし、うつ病治療反応性や診断マーカーとして利用を目指すために、うつ病患者に特異的に変化しているTJA-I結合タンパク質を同定していく。同定されたタンパク質については、うつ病モデルマウス脳内での役割についても検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、成果について論文投稿中であり、追加実験などの予定が立てづらかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、SDS-PAGE用ゲルなどの消耗品に使用する予定である。
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