研究課題
特定のタンパク質の糖鎖構造は、癌などのバイオマーカーとして有用であることが報告されている。しかし、血漿タンパク質の糖鎖構造とうつ病との関係はこれまでに研究されていない。そこで、うつ病モデルマウスおよびうつ病患者の血漿サンプルを用いて、血漿タンパク質の糖鎖構造を調べた。慢性ストレス負荷BALB/cマウスをうつ状態のモデルとして用い、この慢性ストレス負荷マウスにイミプラミンを投与したマウスを寛解状態のモデルとした。また、うつ病患者のうつ状態および寛解状態の血漿タンパク質の糖鎖構造を調べ、うつ病モデルマウスの結果と比較した。様々な糖鎖構造に対する結合親和性を有する45種のレクチンを用いたレクチンマイクロアレイで糖鎖構造を解析したところ、10種のレクチンと結合する血漿タンパク質がうつ病患者で変化しており、特にSia-alpha2-6Gal/GalNAcが、うつ病モデルマウスおよびうつ病患者の両方において変化していることが示唆された。さらに、うつ病患者の白血球において、シアル酸転移酵素であるST6GALNAC2は、うつ病期に比べて寛解期で発現が低下していた。以上の結果から、末梢血白血球における血漿タンパク質のSia-alpha2-6Gal/GalNAcなどの糖鎖構造は、うつ病の診断や治療反応のモニタリングのための候補バイオマーカーとなることが示唆され、その成果の一部を日本生物学的精神医学会などの国内学会や国際学会であるSociety for Neuroscienceで発表し、また論文としてJournal of Affective Disordersに報告することが出来た。
すべて 2018
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Journal of Affective Disorders
巻: 233 ページ: 79-85
10.1016/j.jad.2017.08.057