研究課題/領域番号 |
16K10191
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
鳥塚 通弘 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (20588529)
|
研究分担者 |
芳野 浩樹 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10347560)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / iPS細胞 / シナプス / 補体 |
研究実績の概要 |
奈良県立医科大学精神科に通院・入院中の統合失調症患者11名、および本研究に賛同を得た健常対照者12名から、書面にて研究参加の同意を得た。全例の上腕内側部のパンチバイオプシーから得られた皮膚線維芽細胞を培養し保存した。このうち8名の検体からエピソーマルプラスミドベクターを用いた方法(Okita K. et al., Nat Methods., 8(5):409-12、2011)でiPS細胞を樹立し、保存した。 我々の細胞培養系でiPS細胞から分化誘導される神経細胞は、そのほとんどがvGlut1陽性で大脳皮質のLayer marker陽性の、大脳皮質の錐体細胞と同等の細胞である。これまでに、この培養神経細胞においてシナプス前蛋白であるSynapsin1の発現をqRT-PCRで認め、免疫染色法ではSynaptophysinと興奮性のシナプス後蛋白であるPSD95の発現を認め、一部は重なり合いシナプスを形成していると考えられた。パッチクランプ法を用いた電気生理学的解析を行うと、活動電位を生じる機能的な神経であることが確認でき、さらには、自発性シナプス後電流(Post synaptic current)も記録され、シナプスの形成が機能的にも確認できた。 次に、健常対照者1名の培養神経細胞を用いて、補体および補体制御因子の発現をqRT-PCR法にて調べたところ、継時的な発現上昇を認めた。これは、シナプス蛋白の継時的な発現変化と相関していると考えられ、シナプス形成の進展に伴って発現量が増加していると考えられた。この神経細胞を、市販のマウス由来ミクログリア細胞株と共培養を行ったところ、共培養可能であることが確認できたが、同細胞株は貪食脳が強く、神経細胞の死滅を招いたため、その他のミクログリア細胞を用いる方法を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞由来神経細胞の培養実験系に関しては、安定して確立できた。また、補体および補体制御因子の発現も確認できた。しかし、ミクログリア細胞株の選択に関しては、まだ検討の余地があり、この点で遅れを生じている。 培養実験系と補体制御因子の発現に関しては、健常者由来サンプルのみではなく、統合失調症患者由来サンプルでも確認はできている。
|
今後の研究の推進方策 |
適切なミクログリア細胞株の同定に努める。共培養が継続して可能となれば、既に作製可能となっている補体制御因子のノックダウンベクターを利用して、同因子や補体がシナプス形成に与える影響を検討していく。また、健常者と統合失調症患者サンプルとの比較で、差異を同定していく。
|