研究実績の概要 |
奈良県立医科大学精神科に通院・入院中の統合失調症患者11名、および本研究に賛同を得た健常対照者12名から、書面にて研究参加の同意を得た。全例の上腕内側部のパンチバイオプシーから得られた皮膚線維芽細胞を培養し保存した。このうち8名の検体からエピソーマルプラスミドベクターを用いた方法(Okita K. et al., Nat Methods., 8(5):409-12、2011)でiPS細胞を樹立し、保存した。 我々の細胞培養系でiPS細胞から分化誘導される神経細胞は、そのほとんどがvGlut1陽性で大脳皮質のLayer marker陽性の、大脳皮質の錐体細胞と同等の細胞である。これまでに、この培養神経細胞においてシナプス前蛋白であるSynapsin1の発現をqRT-PCRで認め、免疫染色法ではSynaptophysinと興奮性のシナプス後蛋白であるPSD95の発現を認め、一部は重なり合いシナプスを形成していると考えられた。パッチクランプ法を用いた電気生理学的解析を行うと、活動電位を生じる機能的な神経であることが確認でき、さらには、自発性シナプス後電流(Post synaptic current)も記録され、シナプスの形成が機能的にも確認できた。 次に、健常対照者1名の培養神経細胞を用いて、補体および補体制御因子の発現をqRT-PCR法にて調べたところ、継時的な発現上昇を認めた。これは、シナプス蛋白の継時的な発現変化と相関していると考えられ、シナプス形成の進展に伴って発現量が増加していると考えられた。統合失調症双子不一致症例由来のiPS細胞から神経細胞を分化誘導し同様に解析したところ、補体制御因子の発現に変化が認められた。
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