研究課題/領域番号 |
16K10192
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
秋山 一文 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40150990)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 双極性障害 / 認知機能 / BACS-J / 一塩基多型 |
研究実績の概要 |
統合失調症と双極性障害のリスク遺伝子は2009年に始まった本格的な全ゲノム解析(GWAS)で報告され、かなりのものは両疾患に共通していることが判明している。同時に程度の差こそあれ両疾患に共通して認知機能障害がみられる。両疾患についての遺伝子と認知機能に関する研究では、当初は数個の候補遺伝子の一塩基多型(SNP)と認知機能との関連性についての研究が主なものだったが、全ゲノム解析などで同定されたなるべく多くのリスクSNPについて同時に解析していく必要がある。そのため本研究では統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)を実施した統合失調症患者350例、双極性障害患者200例、健常対照者350例、計900例を対象にして、先行研究を参考に認知機能に関わる可能性が示されている遺伝子の40個の一塩基多型(SNP)を選定し、解析する。BACS-Jの各ドメイン評点に対する各SNPの影響を解析ソフトPLINKによって解析するとともに、SNPのリスクアレルを基に対象者毎にgenetic risk score (GRS)を算出し、分散分析法により各群内におけるGRSの効果量、GRSと群間の相互作用とその効果量を算定する。選定したSNPが日本人対象の認知機能に対してどの程度の効果量をもつかを明らかにするのが研究の概要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度にはMassARRAYによる網羅的解析を行うことを前提とし、解析の対象となるSNPの選定作業を行った。研究費の関係から絞り込めるSNP数は限られているので、先行研究で報告されている認知機能、脳画像所見に関係するSNPを厳選し、かつそれらのMinor Allele Frequencyが日本人で一定の割合以上であることをデータベース上で確認した。選定SNPの妥当性について、本研究の実際の解析を委託する理研ジェネシスと緊密な連絡を取り、同社が手がけた過去の解析実績などに基づいた評価も勘案し、最終的に40個のSNPを選定した。一方、獨協医科大学病院またはその関連病院に通院中または入院中の統合失調症と双極性障害の患者、及び患者と性差・年齢をなるべく近似させた健常対照者について、全般的な認知機能検査としてその有用性が証明されているBACS-Jのデータ蓄積を続けた。病前の知能指数はJapanese Adult Reading Test (JART)を用いて推定した。患者群においては社会機能評価尺度(Social Functioning Scale)日本語版(SFS-J)の評価を行う。寛解期の双極性障害患者に関してはヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale , YMRS)、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale , HDRS)、エピソード回数、精神病性特徴の有無、炭酸リチウムへの反応性なども評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
当該科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書に記載したように研究を推進していく。平成29年度半ばに、統合失調症患者350例、双極性障害患者150例、健常対照者400例、計900例を対象にBACS-Jの成績を取得し、ゲノムも蓄積し、集積したDNAサンプルを理研ジェネシスに送付し、最終選定したSNPについてMassARRAYジェノタイピングを行う。解析は2ヶ月程度で完了する予定である。そして解析対象遺伝子と認知機能との関連を詳細に解析する。MassARRAYジェノタイピングによりいくつかの重要な脆弱領域・遺伝子が絞り込めるものと予想される。統計解析法としては最も汎用性の高い遺伝子解析ソフトであるPLINK :[http://pngu.mgh.harvard.edu/~purcell/plink/]によるlinear regression modelを用いてrecessive, dominant, additiveの3通りのモデルで解析する。それぞれのSNP多型、年齢JARTによって推定した病前知能指数、教育年数がBACS-Jの各ドメイン(言語性記憶、ワーキングメモリー、運動機能、言語流暢性、注意、遂行機能に与える影響を患者群、健常対照群のそれぞれについてPLINKによって統計解析し、相互作用も解析する。また、患者群においては社会機能評価尺度(Social Functioning Scale)日本語版(SFS-J)を評価し、SNP多型との関係を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数の1円が残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に繰越し、使用する。
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