研究実績の概要 |
統合失調症と双極性障害には共通して認知機能の障害が存在することが報告されている。本研究では統合失調症345例と双極性障害149例、及び患者と性差・年齢をなるべく近似させた健常対照者366例の計860例を対象として、精神疾患患者に適した全般的な認知機能検査として有用性が証明されている統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS、言語性記憶、ワーキングメモリー、運動機能、言語流暢性、処理速度、遂行機能の各ドメインからなる)を用いて認知機能の評価を行った。同時に、先行研究を参考に認知機能との関連が示唆されている遺伝子から40個の一塩基多型(SNP)を選定し、MassARRAYによってジェノタイピングした。それぞれのSNPのジェノタイプを独立変数、BACSの各ドメインのz-scoreを従属変数とする線形回帰解析を、性、年齢、教育年数を共変数として、最も汎用性の高い遺伝子解析ソフトであるPLINKによるlinear regression modelを用いてrecessive, dominant, additiveの3通りのモデルで行った。有意水準はBACSの各ドメインのz-scoreに対しては0.05/6=0.0086、composite scoreに対しては0.05とした。健常対照群で測定されたcomposite scoreはadditive model、dominant modelを適用するとglutaminase (GLS)のrs13000464と有意な相関関係(P=0.0235, P=0.0218)を有した。双極性障害で測定されたcomposite scoreはdominant modelを適用するとLSM1 homolog, mRNA degradation associatedのrs16887244と有意な相関関係(P=0.0477)を認めた。
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