研究実績の概要 |
本研究の目的は、産業および一般集団サンプルを対象に、1)多数の遺伝子座位を組み合わせた遺伝リスクスコアによるうつ状態の予測因子の探索、2)職場環境ストレスによる遺伝子とうつ状態の関連の評価、等である。 今年度は、九州地区の企業に勤務する従業員約400名と北陸地区の企業より約300名の総計約700名のサンプルを対象に、Illumina 300Kチップを用いて、全ゲノム関連解析を実施した。 1)の遺伝リスクスコアの予測としては、九州サンプル(n=372)と北陸サンプル(n=308)の2群間で検討を行った。ポリジェニック解析によって、P値が0.01, 0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5以下のSNPs群でそれぞれの群での因子を計算し、北陸サンプル⇒九州サンプル、九州サンプル⇒北陸サンプルの予測を行ったところ、北陸サンプル⇒九州サンプルの最小P=0.157、九州サンプル⇒北陸サンプルの最小P=0.322であり、有意な結果はみられなかった。 2)では、それぞれのサンプル内でK6の得点(13点以上をうつ状態)で健常-うつ状態群の2群に分け(九州サンプル(n=372;51 case vs 282 control)と北陸サンプル(n=308;36 case vs 272 control))、各サンプルを用いてうつ状態の全ゲノム関連解析を行った。その結果、九州サンプルと北陸サンプルで共通に有意(P<0.01)なSNPとして10個が見出された。さらに、一般集団サンプルを用いてCES-D得点(16点をカットオフとする)によりうつ状態群(n=20)と健常対照群(n=27)の2群に分け、全ゲノムメチル化関連解析を行ったところ、G蛋白共役型パスウェイに含まれる遺伝子群が有意に関連していることが示された(Shimada et al., 2018)。
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