研究課題
1.平成28年度にはまずうつ病を含む一般成人415名を対象に実施した質問紙調査データを用いて、小児期の養育体験、虐待が神経症的特質への影響を介して、抑うつ症状とストレスの否定的評価を増強するという仮説を検証した。その結果、小児期の低養育、過保護、虐待(特にネグレクト)が神経症的特質を増強し、さらに間接的に抑うつ症状とストレスの否定的評価を増強することが明らかになった。このモデルでは小児期の低養育、過保護は直接抑うつ症状に影響を与えることはなかったが、小児期の虐待(特にネグレクト)は直接抑うつ症状に影響を与えていた。したがって、抑うつ症状に対する小児期の低養育、過保護の影響はほとんど神経症的特質によって媒介される経路が主であるといえる。一方、小児期の虐待(特にネグレクト)は神経症的特質以外の特性への影響も介して抑うつ症状に影響を与えている可能性があり、低養育・過保護と虐待のうつ症状に対する作用機序が異なることが示唆される。2.小児期の養育体験は自尊感情への影響を介して特性不安に影響することも明らかになった。さらに、小児期虐待の抑うつ症状に対する効果が循環、抑うつ、不安、焦燥などの感情気質により媒介されていることを我々は既に明らかにしてきたが、感情気質の効果はさらに対人関係敏感性によって媒介されていることも明らかになった。3.上記の小児期体験、パーソナリティ特性、抑うつ・不安症状と睡眠、職業性ストレス、レジリアンスとの関連について大規模調査を開始し、集計解析中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに多数のデータを集め、多変量解析により精神医学にとって重要な所見がえられている。
現在研究計画を計画通りに推進して、研究成果を得たい。
順調に研究費を使用して研究を進めたが、年度をまたぐ研究のため、少額年度内に支出しきれなかった。しかし、次年度に継続する研究において次年度使用額を使用する予定である。
引き続き、データ収集のための消耗品、謝礼に使用していく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)
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