研究課題/領域番号 |
16K10195
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
毛利 彰宏 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (20597851)
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研究分担者 |
鍋島 俊隆 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 客員教授 (70076751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 注意欠陥・多動性障害(ADHD) / プロスタグランジン / NMDA受容体 / メチルフェニデート / アトモキセチン / 細胞外シグナル調節キナーゼ |
研究実績の概要 |
注意欠陥・多動性障害(AD/HD:Attention Deficit/Hyperactivity Disorder)は注意欠損、多動性、衝動性、社会性行動の低下を中核症状とする。一方、その行動妥当性の高いAD/HDの動物モデルは少ない。そこで本研究では、NMDA受容体拮抗薬であるフェンサイクリジン(PCP)連続投与マウス、およびプロスタグランジン受容体の一つであるEP1遺伝子欠損マウスの行動異常がADHDに関連していることに注目し、これらマウスに一連の行動試験を行い、ADHDに類似した行動異常を示すかどうか検討を行った。PCP連続投与動物およびEP1遺伝子欠損マウスにおいて、断崖回避試験における衝動性の亢進、および社会性行動試験における社会性行動の低下などの情動障害とともに、AD/HDの中核症状の一つである認知機能の障害が新奇物体認知試験における物体認知障害および水探索試験における潜在学習障害として認められた。それらの行動異常に対してADHD治療薬(メチルフェニデート・アトモキセチン)が有効かどうかについて検討を行ったところ、これら行動障害は有意に改善が認められた。PCP連続投与動物およびEP1遺伝子欠損マウスがADHDモデル動物としての有用性が認められたため、NMDA受容体およびプロスタグランジンがADHDの機能分子として期待される。次にこれらモデル動物において共通したADHDの発症から回復までの機能分子の解析を細胞内シグナル分子に注目して検討を行ったところ、前頭皮質において細胞外シグナル調節キナーゼ(Extracellular Signal-regulated Kinase、ERK)1/2のリン酸が有意に低下し、それらがADHD治療薬により有意に回復することを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目標は①ADHDの発症から回復までの中枢・末梢での機能分子の発現解析および②精神機能における機能分子の役割の解明、それに基づく新しいADHDモデル動物の開発である。NMDA受容体拮抗薬であるフェンサイクリジン(PCP)連続投与マウスおよびプロスタグランジン受容体の一つであるEP1遺伝子欠損マウスのADHDモデル動物の有用性を明らかにすることができたため、②であるADHDモデル動物の開発が達成できている。また、NMDA受容体およびプロスタグランジンがADHDの機能分子として期待されるとともに、それらの共通分子として細胞外シグナル調節キナーゼ(Extracellular Signal-regulated Kinase、ERK)1/2のリン酸の低下および、それに対するADHD治療薬による回復が認められたため、①ADHDの発症から回復までの中枢・末梢での機能分子の発現解析についても達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はドパミン・ノルアドレナリン神経伝達の関連タンパクへの機能分子の作用について明らかにする。すなわち、ADHDにおいて機能低下が認められるドパミンやノルアドレナリン作動性神経系における機能分子の役割を明らかにする。初代培養の前頭前皮質由来の神経細胞および株化細胞に、機能分子を培養上清に添加、もしくはその関連遺伝子を過剰発現もしくはノックダウンする。それによるドパミン・ノルアドレナリン神経伝達の関連タンパクの発現および機能変化(①トランスポーターなどのプレシナプス機能、②受容体などのポストシナプス機能、③転写因子やエピジェネティクスなどの遺伝子発現制御)の作用(図4)を検討し、機能分子の役割について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で用いる抗うつ薬フルボキサミンが納品前に在庫切れになってしまい、年度末に納品が間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに年度末に発注済みであり、納品済みである。
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