研究実績の概要 |
衝動性や情動欠如はパーソナリティー障害や様々な問題行動と関連し、これらの人格特徴は環境的要因と遺伝的要因およびそれらの相互作用により形成されると報告されている。一方、脳内オピオイド系と神経ペプチドのオキシトシンは、鎮痛、報酬、動機付け、社会認知、親子間の愛着関係など広範な生理機能の調節に関与している。これまでの基礎研究において、衝動性・情動欠如の形成にオピオイド受容体機能、オキシトシン機能、幼少時期の養育環境が関与することが示唆されているが、ヒトにおいて包括的に検討した研究はこれまでに行われていない。そこで、本研究では健常人を対象としてオピオイド受容体・オキシトシン受容体の遺伝多形と幼少時期の養育態度の相互作用が衝動性・情動欠如に与える影響について検討する。 具体的には、精神的および身体的に健常であるとスクリーニングされた日本人約1,000例を対象に、TCI、NEO-PI-R、PBIを用いて対象の衝動性・情動欠如、幼少時期の養育態度を評価する。対象の末梢血液を採取し白血球より抽出したDNAを用い、オピオイド受容体遺伝多形、オキシトシン受容体遺伝多形をPCR法により同定する。得られた結果よりオピオイド受容体・オキシトシン受容体の遺伝多形と幼少時期の養育態度の相互作用が衝動性・情動欠如に与える影響について検討する。 研究計画に基づき、平成30年度には対象の募集、衝動性・情動欠如の評価、養育環境の評価、静脈血採血・DNA抽出、OPRM1遺伝多形、オキシトシン受容体遺伝多形の同定を行った。本年度に得られた結果の解析を行い海外雑誌に投稿し、3編の論文として公表、1編が現在投稿中である。
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