研究実績の概要 |
富山大学附属病院外来を受診した、Comprehensive Assessment of at risk mental state(CAARMS)による診断基準(Yung et al., 2005)を満たした精神病発症リスク状態(at-risk mental state; ARMS)の患者、あるいは、国際疾病分類(ICD-10)の診断基準をみたした統合失調症患者を、omega-3不飽和脂肪酸(polyunsatulated fatty acids; PUFAs) 投与群、非投与群に分け、縦断的な検査を実施した。PUFAs 投与群の患者には、Eicosapentaenoic acid(EPA)+Docosahexaenoic acid(DHA)製剤(ロトリガ粒状カプセル)を処方薬として投与した。内服前(ベースライン)、および内服後6 ヶ月、1 年で検査セット(脳波、症状評価、認知機能検査など)を行った。 結果、PUFAs投与群において赤血球膜のω3不飽和脂肪酸濃度は半年で有意に上昇し(p<0.001)その値は1年後も保たれた。PANSSで測定される陰性症状、総合精神病理尺度改善が認められた(各々p=0.003, p=0.01)。BACSを用いて認知機能を測定したところ、Zスコアで-0.32±0.85であったのが、6ヶ月で0.06±0.89 (p=0.001)、1年で0.16±0.85 (p=0.0005)に改善した。そのうちEPAは遂行機能(rs=0.506, p=0.007)、DHAは運動機能(rs=0.417, p=0.03)および言語流暢性 (rs=0.424, p=0.02)の得点と有意に相関した。事象関連電位(P300)を3次元画像解析法であるLORETAにて解析したところ、上前頭回、前頭極を中心に有意な発生源電流密度の上昇が認められた (p=0.042)。これらの結果よりPUFAsの陰性症状や認知機能の改善の生物学的メカニズムとして前頭葉機能の改善がベースであることが示唆された。
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