研究課題/領域番号 |
16K10206
|
研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
高橋 哲也 福井大学, 保健管理センター, 准教授 (00377459)
|
研究分担者 |
菊知 充 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00377384)
平石 博敏 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 研究員 (40643789)
山西 輝也 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (50298387)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 自閉性スペクトラム障害 / 神経ネットワーク / GABA神経 / 脳磁図 / オキシトシン |
研究実績の概要 |
抑制性神経であるGABA神経伝達の障害は、自閉性スペクトラム障害(ASD)における神経ネットワーク障害仮説の神経基盤として重要な役割を担う。オキシトシンはGABA神経の興奮性から抑制性へのシフトをもたらし、その欠如がASDの発症に関連するとされ、近年オキシトシンのASD治療薬としての可能性が注目されている。一方、γ帯域律動はGABA神経活動を、また非線形理論・グラフ理論は神経ネットワーク活動を探る有用な手段として注目されている。本研究では、脳磁図のγ帯域律動波解析および非線形/グラフ解析を用いてASDにおけるGABA神経活動および神経ネットワークの障害を浮き彫りにし、さらにオキシトシンの治療効果を踏まえて統合的に検討する。 成人ASD患者を対象に、オキシトシンおよびプラセボ投与後の脳磁図を計測し、さらに臨床症状変化を評価した。脳磁図計測では安静時および40Hz聴性定常反応時(40Hzの聴覚刺激)のγ帯域律動をそれぞれ計測し、現在脳磁図データの解析中である。解析にはネットワーク解析として、マルチスケールエントロピー解析、位相同期解析・グラフ解析、位相同期変動解析を施行し、また一般的な線形解析としてフーリエ解析およびWavelet解析を行っている。 一方、小児ASDを対象として行ったグラフ解析を用いた脳磁図研究においては、GABA神経活動を反映するγ帯域律動におけるスモールワールド性(情報伝達の効率性)がASD児で増強しており、一方δ帯域律動においてはスモールワールド性が低下していることを明らかとした(minor revision: resubmitted)。本研究はASD児におけるGABA神経活動の異常を神経ネットワークレベルにおいて明らかにしたものであり、今後本解析法がASDを特徴づける有用なバイオマーカーとなる可能性を示すものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定されていた被験者のリクルートおよび脳磁図計測、臨床症状評価は順調に進められた。また、同時に進められていた各種ネットワーク解析アルゴリズム開発も順調に進められ、申請時には予定外であった新規解析法(動的位相変動解析(現在特許申請中))の開発も行うことができた。現在上記解析法を用いた脳磁図データの解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、新規ネットワーク解析アルゴリズムの臨床的妥当性の検証を含め、脳磁図データ解析を速やかに行い、オキシトシン投与による脳磁図変化を臨床的背景や臨床的治療効果を踏まえて統合的に検討する。得られた結果からASDにおける実践的なバイオマーカーを確立し、さらにはオキシトシンの治療効果判定や治療効果の予測に繋げる。 研究期間中に得られた成果は、学会等にて発信し、さらには論文発表に繋げてゆく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ処理や解析のために当初購入を予定していた物品について、今年度は既存のもので代用できたため購入を見送ったこと、出張予定であった国際学会に業務の都合により出張できなくなり、該当年度の国際学会での発表を見送ったこと、などの理由から次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、データ解析を迅速に進めるため、複数台での解析を並行して行うためにソフトウェアをあらたに購入する。また引き続き、解析結果の検討を行うための研究ミーティングを積極的に行い、また研究結果の発表を行うための旅費に充填する。
|