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2017 年度 実施状況報告書

社会的孤立の負荷期間延長は、うつ状態の増悪ではなく、躁状態を引き起こすか?

研究課題

研究課題/領域番号 16K10208
研究機関福井大学

研究代表者

小俣 直人  福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (30334832)

研究分担者 清野 泰  福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50305603)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード社会的孤立 / 短期間 / 長期間 / うつ様行動 / 不安様行動 / リチウム
研究実績の概要

社会的孤立など生活環境の問題は、うつ病をはじめとする気分障害の発症と関連することが報告されている。社会的孤立に暴露される期間が長くなると精神機能はさらに悪影響を受け、うつ状態が増悪することが想定される。ところが、実験動物を用いた我々のこれまでの研究では、社会的孤立を3週間負荷するとうつ様行動を呈するのに対し、負荷期間を8週間に延長するとうつ様行動はさらに増悪するのではなく、かえって減弱することが明らかとなってきた。今回我々は、代表的な気分安定薬であるリチウムが社会的孤立の負荷期間延長に伴う行動変化に与える効果を評価することを目的に実験を行った。
3週齡のWistar ratに対して社会的孤立負荷(個別飼育)を開始し、3週間または8週間飼育した。社会的孤立3週間負荷群では、負荷開始1週間後より与える水を通常水から12 mMリチウム水に、社会的孤立8週間負荷群では、負荷開始6週間後より与える水を通常水から30 mMリチウム水にそれぞれ切り替えて更に2週間飼育した後に、強制水泳試験(無動時間をうつ様行動の指標とする)や高架式十字迷路試験(壁の無いオープンアームでの滞在率(% open)を不安様行動の指標とする)を行った。
社会的孤立3週間負荷群では、強制水泳試験における無動時間の延長がリチウム投与によりコントロール群とほぼ同程度となり、うつ様行動は認められなくなった。社会的孤立8週間負荷群では、強制水泳試験における無動時間の減少や高架式十字迷路試験における% openの増加がリチウム投与によりコントロール群とほぼ同程度となり、うつ様行動や不安様行動の減少は認められなくなった。以上より、実験動物において観察された行動変化(社会的孤立によるうつ様行動の出現と、その負荷期間延長によるうつ様行動の減少)は、ヒトにけるうつ状態・躁状態と類似したものである可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初は本年度(平成29年度)に実施する計画であった、社会的孤立の負荷期間延長が中枢ノルエピネフリン神経系に与える影響の評価は、昨年度(平成28年度)で完了することが出来た。そこで本年度は、当初の計画には盛り込んでいなかった、社会的孤立の負荷期間延長による行動変化に対するリチウムの効果を評価することが出来た。今回の結果から、様々な期間の社会的孤立を負荷された実験動物は、ヒトにおける双極性障害のモデル動物となる可能性があることを示すことが出来た。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、社会的孤立の負荷期間延長が神経可塑性に与える影響を評価する。3週齡のWistar ratに対して社会的孤立負荷(個別飼育)を3週間あるいは8週間行った後、神経可塑性に深く関わるタンパクである脳由来神経成長因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)、postsynaptic density protein 95 (PSD95)、glycogen synthase kinase 3β (GSK3β)およびcAMP response element binding protein (CREB)の発現を、ウェスタンブロッティング法を用いて脳の様々な部位(前頭葉皮質、線条体、視床、海馬、小脳、橋)で評価する。
また、当初の計画には盛り込んでいなかったが、神経可塑性に関連するタンパクの発現に対するリチウムの効果の評価も行う。社会的孤立3週間負荷群では、負荷開始1週間後より与える水を通常水から12 mMリチウム水に、社会的孤立8週間負荷群では、負荷開始6週間後より与える水を通常水から30 mMリチウム水にそれぞれ切り替えて更に2週間飼育した後に、上述と同様の手順で神経可塑性に関連するタンパクの発現を評価する。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
実験動物に対する社会的孤立の負荷期間延長に伴う行動変化が予測よりも顕著に観察され、当初計画していたものより少ない実験動物の数や実験の回数で目標を達成する成果を得ることが出来た。また、本年度に実施した、社会的孤立の負荷期間延長による行動変化に対するリチウムの効果の評価は、当初は本年度に行う予定であったが昨年度中に完了できた、社会的孤立の負荷期間延長が中枢ノルエピネフリン神経系に与える影響の評価よりも費用を掛けずに実施できた。
(使用計画)
3週齡のWistar ratを購入し、社会的孤立負荷(個別飼育)を3週間あるいは8週間行う。また、炭酸リチウムを購入して12mMまたは30mMのリチウム水を作成し、社会的孤立3週間負荷群または8週間負荷群に投与する。神経可塑性に深く関わるタンパク(BDNF, PSD95, GSK3β, CREB)の一次抗体を購入し、それぞれをターゲットとしたウェスタンブロッティングを施行して、社会的孤立の負荷期間延長やそれに対するリチウム投与が神経可塑性に与える影響を評価する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Mania is an extension of depression from the perspective of neuronal plasticity ? Evaluation of our hypothesis through the affective spectrum2017

    • 著者名/発表者名
      Omata Naoto、Mizuno Tomoyuki、Matsumoto Hiyori、Mitsuya Hironori、Mita Kayo、Kiyono Yasushi、Wada Yuji
    • 雑誌名

      Medical Hypotheses

      巻: 102 ページ: 87~88

    • DOI

      10.1016/j.mehy.2017.03.018

    • 査読あり
  • [学会発表] 精神疾患における化学的不均衡仮説への疑問2017

    • 著者名/発表者名
      小俣直人、水野智之、松本日和、三田香代、和田有司
    • 学会等名
      第36回躁うつ病の薬理・生化学的研究懇話会

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公開日: 2018-12-17  

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