研究実績の概要 |
平成29年度に大阪大学病院神経科精神科の外来を受診し、特発性正常圧水頭症(idiopathic normal pressure hydrocephalus: iNPH)診療ガイドラインのpossible iNPHの診断基準を満たした新規症例は17例であった。平成28年度末にpossible iNPHと診断された3例をあわせた20例中16例に対して髄液排除試験を行った。髄液排除により3徴に改善を認めたのは6例(男:女=6:0)であった。これらの症例の髄液排除前のiNPH grading scaleの歩行、認知、排尿のスコアはそれぞれ1.7±0.5, 1.3±1.1, 1.0±0.6であった。その他の臨床評価項目の結果は、modified Rankin Scale 2.0±1.2, Clinical Dementia Rating 0.5±0.4, Mini Mental State Examination 24.1±4.6, Timed Up and Go test 13.5±3.7秒, 10m往復歩行検査20.0±5.6秒, GSSR4.5±5.0, ICIQSF4.0±3.4であった。 また平成29年10月末よりMRIのPhase Difference Enhanced Imaging(PADRE)法を導入した。PADRE法導入後、上述の20例のpossible iNPH患者のうち、4例を仮登録し、PADREを実施した。仮登録症例のうちprobable iNPHの診断基準を満たして本登録となったのは2例であった。本登録症例のうち、髄液バイオマーカー検査の結果から、アルツハイマー病(Alzheimer's disease: AD)病理を有すると考えられた症例は0例であった。本登録された2例ともにシャント術が施行され、ともに術後経過は良好であった。
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