研究課題
昨年度、SSRIであるフルボキサミンがシグマ1受容体誘導効果を介して神経細胞死を抑止することを示したが、本年度はフルボキサミンのシグマ1受容体誘導メカニズムについて検討を行った。我々は以前に、小胞体ストレスに応答するシグマ1受容体発現の増加が、小胞体ストレスに対する細胞応答の1つであるPERK経路を介することを示している。そこで、フルボキサミン処理した神経細胞で、PERKの下流にあるATF4発現の変化を調べたところ、フルボキサミン処理に応答するシグマ1受容体発現の増加は、ATF4による転写活性化によるものであることが示された。さらに、シグマ1受容体発現に対するATF4ノックダウンの効果を調べた。ATF4およびシグマ1受容体発現は、フルボキサミンで処置した対照およびATF4過剰発現細胞の両方で増加したが、ATF4ノックダウン細胞では、フルボキサミン処理でもシグマ1受容体タンパク質発現の増加は認められなかった。また、シグマ1受容体遺伝子プロモーター領域(-582-156)をホタルルシフェラーゼプラスミド(pGL4.12 [luc2CP])に融合させたレポーターアッセイシステムを用いて、ATF4の役割をさらに解析した。フルボキサミン処理は、対照細胞におけるシグマ1受容体発現を誘導したが、フルボキサミン処理に応答するシグマ1受容体の発現は、ATF4ノックダウン細胞において減少した。これらの結果は、フルボキサミンが誘導するシグマ1受容体発現がATF4によって媒介されることを示している。
3: やや遅れている
本年度は、治療薬候補のフルボキサミンの作用メカニズムを検討することが必要と考え、これを集中して行ったため、アルツハイマー病治療戦略に対する実験が若干遅れた。
次年度は、アルツハイマー病治療戦略に対する実験を集中して行い、研究をまとめる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Cell Rep
巻: 21 ページ: 259-273
10.1016/j.celrep.2017.09.032
Neurodegener Dis
巻: 17 ページ: 103-109