研究課題/領域番号 |
16K10214
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石井 良平 大阪大学, 医学系研究科, 招へい准教授 (40372619)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 経頭蓋直流電気刺激法 / 脳波 / 脳磁図 / コネクティビティ |
研究実績の概要 |
経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation :tDCS)の統合失調症治療に対する臨床応用へ向けて、最適な治療設定を決定することを目的とした。また、tDCS前後の脳内ネットワークの変化を脳波解析などの神経生理学的手法で解明し、精神症状・認知機能障害の変化との相関から、統合失調症の病態を解明することを目指した。具体的には、 (1)種々の刺激条件・部位の設定を用いたtDCSによる、統合失調症の認知機能・精神症状など臨床面での変化 (2)tDCSによる前頭葉機能を中心とした脳内神経ネットワーク変化の解明 (3)統合失調症の認知機能・精神症状の病態解明 の3点を明らかにすることを目的とした。そのために、まずは気分障害患者におけるtDCSの認知機能改善の効果について、2つの刺激条件で、刺激前後の被験者の認知機能、気分障害症状の変化と脳波による部位間相関解析を解析した。その結果、気分障害症状や認知機能には著明な変化はないにもかかわらず、脳波解析による脳内部位間の相関に変化が見られた(原稿提出中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在統合失調症への応用の前段階として、気分障害に対するtDCSへの臨床応用の適応と、刺激前後の脳波ネットワーク解析を行い、当初予想された結果が得られつつある。今後、この適応を統合失調症へ拡大し、同様の解析を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
DSM-Ⅴで統合失調症の診断基準を満たし、年齢は20歳以上60歳未満の、当院通院中の統合失調症患者20名を対象とする。tDCSの刺激設定としてはDC Stimulator plusを使用し、刺激条件は2mAで20分間とする。生理食塩水で湿らせた5×7㎝の陽電極、陰電極を、それぞれ下記の設定で片側の背外側前頭前野(Dorsolateral Prefrontal Cortex:DLPFC)と側頭頭頂野(temporoparietal cortex:TP)に当てて刺激する。 陽極×陰極:左DLPFC×左TP 陽極×陰極:左DLPFC×右TP 陽極×陰極:左DLPFC×右DLPFC このそれぞれの刺激設定に対して、各設定に20名ずつ、A群、B群に10名ずつ割りつける。前期試験クール開始前、開始後および後期試験クール開始前と開始後に精神症状と認知機能を評価する。MEG測定は、現有設備である200チャンネル全頭型脳磁計PQ1160C(横河電機(株)製)を用いて、外部の磁気雑音を遮断するシールドルーム内で行う。聴覚定常応答課題(SSR:steady-state response)、P50、PPIなどの短中潜時の感覚受容反応から、MMN (mismatch negativity)、音声言語刺激課題、顔画像刺激課題、注意課題、ワーキングメモリ課題、P300、N400などの長潜時の高次認知機能反応まで、様々な認知課題を呈示し、誘発される脳磁場活動を測定し、オフラインで時系列解析を行う。各周波数帯域活動の解析では、FFT、ウェーブレット、ICAといった基本的な時系列解析を用いて成分を抽出し、空間フィルタ法、LORETA法などの逆問題解法を用いて活動源の推定を行う。その後、コヒーレンス解析、ウェーブレット相互相関解析などの相関解析により、各部位間の関連を時系列で明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定であった学会にやむを得ず欠席したためと、購入予定の備品の減価償却が延長し余剰が生じたが、当初予定している学会に出席しまた当初より予定している備品を購入する計画である。
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