研究実績の概要 |
誘発auditory steady-state response (ASSR)は主に抑制性の神経機能を反映し、自発ガンマ活動は主に興奮性の神経機能を反映していると考えられている。 全頭型脳磁計を用いて統合失調症54名、双極性障害32名、うつ病22名、健常者62名のASSRを記録し、解析を行った。ASSRのピーク値、位相同期性としては、両側半球性に、健常対照者=うつ病>双極性障害=統合失調症という結果が得られた。クリック音刺激中のパワー値は、統合失調症>双極性障害>うつ病=健常対照者という結果であった。 この結果からは、統合失調症では、興奮性・抑制性神経機能のバランスの障害が顕著で、双極性障害はその程度が軽いが統合失調症に近いパターンであり、うつ病は興奮性・抑制性神経機能のバランスの観点からは、健常者に近いと思われる。 なお、本研究課題期間で平成30年度は、別のデータセットであるが、統合失調症では、位相同期カップリングの左右半球バランスが正常対照者とは異なるという研究も行い論文として報告した(Hirano S, et al. Biol Psychiatry: CNNI, 3: 69-76, 2018.)。また、初発統合失調症では、進行性に聴覚ガンマ帯域活動が減弱するが、ハイリスク群では進行を認めなかったという研究結果も論文として報告した(Oribe N, Schizophr Res, in press.)。 本研究により、精神疾患の興奮性・抑制性神経機能のバランスの障害という観点からの、疾患の再分類の可能性や客観的診断の補助としてこの指標が役立つ可能性が示唆された。
|