研究課題
これまでの我々の研究において、幼少期のマウスの隔離飼育により、マウスが成体になった後に内側前頭前野第五層の錐体細胞のうち、h-currentという電流を持つ特定のタイプのものにおいてのみ、その興奮性が低下し、興奮性シナプス入力が低下することを示した。今回はまず、抑制性シナプス入力が錐体細胞においてどのように変化するかを調べ、興奮性シナプス入力でそうであったように、特定の錐体細胞においてのみ、抑制性シナプス入力が増加していた。とくに微小抑制性後シナプス電流ではなく、自発性抑制性後シナプス電流において変化がみられていた。そのことから、抑制性シナプス入力を行う介在ニューロン側の変化が示唆された。そこで、抑制性シナプス入力の変化の源となるであろう、介在ニューロンの興奮性が、隔離飼育によって影響を受けるかどうかを調べた。結果、幼少期の隔離飼育により、成体に発達後、内側前頭前野第五層の介在ニューロンのうちfast-spiking neuronの興奮性が変化していることがわかった。一方でfast-spiking neuron以外の介在ニューロンではそのような変化は認めなかった。内側前頭前野の第五層の特定の錐体細胞とfast-spiking neuron が接続しており、同時に隔離飼育により影響を受けていることが示唆された。今後はさらにfast-spiking neuronへ入力する興奮性シナプス入力がどのように隔離飼育によって影響をうけるかを調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
隔離飼育による錐体細胞上の抑制性シナプス入力の変化の同定に続いて、fast-spiking neuronの変化も見出し、局所的な回路変化の流れを追うことができている。
隔離飼育による介在ニューロン(fast-spiking neuron)への影響について、興奮性が高まることに加えて、さらに興奮性シナプス入力などについても影響がないかどうか、さらに踏み込んで調べていく
計画的に物品を購入し、少額の残金が生じた。次年度の助成金とあわせて、試薬等の物品などを購入する予定である。
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