マウスを幼少期に隔離飼育することにより、成体に発達後の内側前頭前野第五層の錐体細胞のうち、h-currentという電流を持つ特定のタイプの錐体細胞において興奮性が低下し、興奮性のシナプス入力が低下することを示してきた。さらに抑制性シナプス入力に関しての研究においては、このサブタイプの錐体細胞に入力する自発性抑制性後シナプス電流のみが増加し、その入力の源と考えられるfast-spiking neuronの興奮性が変化していることを明らかにしていた。今年度は、そのfast-spiking neuronの興奮性が発達段階において変化した原因の一つとして、fast-spiking neuronに入力する興奮性シナプス伝達に変化が見られているのではないかと考えた。実際に、隔離飼育後の成体マウスの内側前頭前野のfast-spiking neuronに入力する興奮性シナプス伝達は、集団飼育マウスと比較して低下していることが明らかとなった。当初はこの興奮性シナプス伝達が集団飼育マウスにおいて亢進しており、活動依存性にfast-spiking neuronの興奮性も上昇していると予想していたが、結果は逆向きであった。成体において興奮性が上がるfast-spiking neuronに対して、代償的に興奮性入力が低下しているのではないかと考えた。
|