研究課題
うつ病ならびに双極性障害における臨床症状の評価に対する光トポグラフィー検査(NIRS)の有用性について検討した。1)双極性障害における自殺傾性の評価を自殺企図歴の有無からNIRSにより検討した。自殺企図歴のある双極性障害患者では、自殺企図歴のない患者に比べて、両側中心前回・上側頭回、左縁上回・下前頭回・中心後回・中側頭回において、有意な賦活反応性の低下が見られた。また、双極性障害患者における現在の自殺リスクが高さは、前頭前野における重心値の増加(賦活反応性の遅延)と有意な相関がみられた。以上より、簡便でかつ非侵襲的で繰り返し測定可能なNIRSが、双極性障害患者における自殺のリスク評価に有用であることが示唆された。2)うつ病において抑うつ症状の自覚症状と他覚症状に乖離がみられる場合、自殺と関連するとされる絶望感の程度やどのようなコーピング様式が有意であるかについて検討した。抑うつ症状の自覚症状と他覚症状に乖離がみられるうつ病では、強い絶望感を示し、自殺企図歴も有意に多かった。また、乖離がみられるうつ病では、乖離がみられないうつ病に比べて動優先型コーピングが優位であった。うつ病における自殺予防においては、情動優先型コーピングに焦点をあてたアプローチが重要であると考えられた。3)ウェアラブル光トポグラフィー装置の有用性を検証するとともに、デフォルト・モード・ネットワークの異常が報告されている統合失調症の内側前頭前野での変化を検討した。その結果、統合失調症の内側前頭前野での減弱が見出され、これは、functional MRIのこれまでの結果を支持するものだった。本研究により、NIRSが安静時脳活動の評価にも有用であることが示された。
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