研究課題/領域番号 |
16K10230
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
小路 純央 久留米大学, 付置研究所, 准教授 (50343695)
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研究分担者 |
山下 裕之 久留米大学, 医学部, 助教 (00529480)
森田 喜一郎 久留米大学, 付置研究所, 客員教授 (20140642)
中島 洋子 久留米大学, 医学部, 教授 (20279235)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症 / 臨時適性検査 / 探索眼球運動 / 自動車運転技能 / 神経心理学的検査 |
研究実績の概要 |
【目的】自動車運転は、注意・記憶・見当識などの認知機能や運転技能の他、有効視野や視空間認識、眼球運動等視覚関連など様々な要素が関連する。しかしながら、高齢者の運転適性の評価は不明な点が多い。本研究では、久留米大学病院もの忘れ外来に、診療目的(診療群)もしくは臨時適性検査(検査目的)の受診者で、運転免許を保有している方を対象として、神経心理学的検査ならびに頭部MRI、探索眼球運動等の精神生理学的指標と、ドライビングシミュレーターによる運転評価を実施し、健常高齢者と比較検討することでその運転安全性を判断する指標を確立する。 【対象及び方法】診療群52名、検査群51名を対象とした。DSM-5診断基準を用いて認知症と非認知症群に分け、認知症群では、アルツハイマー型認知症(AD群)とその他の群とした。総ての被験者には当研究を書面にて説明し同意を得た後施行した。尚当研究は、久留米大学倫理委員会の承認を得て行っている。認知症の評価は、各種心理検査などに加え、EMR-8(nac社)を用いた探索眼球運動を施行した。さらに頭部MRIを施行し、統計画像解析として、VSRAD advance2及びVbSEEにて解析した。また今後、ドライビングシミュレーターのデータも収集し、結果に反映していく。 【結果と考察】検査群、診療群で、年齢、HDS-R、MMSE, CDR、VSRADのz-scoreに群間差は無かった。HDS-RとTSL、及びRSSとに有意な正の相関があった。VSRADのz-scoreとVbSEEの海馬において、HDS-Rと有意な負の相関を認めた。Brodmann Areaにおける9野、10野、40野において、診療群では、TSLとZ-scoreに有意な負の相関が観察され、検査群では正の相関が観察された。探索眼球運動検査は、視覚認知機能を反映し、認知症の補助診断と運転免許の適正検査に有用な精神生理学的指標となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回予定している検査として、MMSE、HDS-R、CDRなどのスクリーニング検査や重症度検査に加えて、Trail Making Test(TMT)課題、Frontal Assessment Battery(FAB)、Symbol Digit Codingなどの神経心理学的検査、頭部MRI及びその統計画像解析、探索眼球運動、多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)及びドライビングシミュレーターを用いた評価を検討し、認知機能と運転技能、脳画像解析など多面的包括的検査を予定している。しかしながら1対象者を検査する所要時間(特に検査群で)に限りがあること、また高次脳機能障害患者で施行されるTMT-A及びTMT-Bは、軽度認知障害(MCI)患者でもしばしば所要時間内に終えることができないこともあり、検査内容の変更も途中から同じく注意機能を反映するとされるSymbol Digit Codingに変更している。 また臨時適性検査の当院への受診者数が当初の予定より減少しており、その要因として、高齢者の運転免許の自主返納も増加しており、検査に協力していただける対象の組み入れの減少も当初の予定より遅れる要因となっている。 さらにドライビングシミュレーターの選定に今回時間を要してしまい、平成30年度からドライビングシミュレーターも踏まえたデータの蓄積を予定しているため、これらの検査データの取得が出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
現在当院における臨時適性検査の多くは、福岡県公安委員会からの紹介によるものが大半である。そのため公安委員会に本研究の趣旨を説明し、改めて検査協力を依頼することで、検査者数の増加を図っていく。また現在検査としては、(特に検査群)半日の受診でこれらの検査を行ってきた。ドライビングシミュレーターの操作については、ある程度の操作に慣れる必要もあり、検査時間を途中の休憩を入れながらにして、1日または、2日に分けて施行するなどして、検査を行える時間をあらかじめ確保するなどで対応する。また検査施行者も多職種の協力も得ながら効率よく検査を進めていく。 さらには、今回平成30年度が最終年度になっているが、fNIRSやドライビングシミュレーター検査をはじめいまだ検査が十分できていないものに対しては、次年度以降も検査を施行続けていく予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)ドライビングシュミレーターの導入に手間取り、予定して研究手順が若干遅れたことにより諸経費に残金が生じてしまった。 (使用計画)今後、測定に関わる諸経費にて順調に使用していく予定である。
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