研究課題/領域番号 |
16K10232
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田村 泰久 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 上級研究員 (60446523)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト前駆細胞 / OPC / NG2グリア / 脳内炎症 / マイクログリア / サイトカイン / HGF |
研究実績の概要 |
本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)が脳内環境保全にどのような役割を果たすのかを明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について探ることを目的とする。成体脳におけるOPCは他のグリア細胞を産生する前駆細胞としての機能はよく知られているが、それ以外の機能については明らかにされていない。これまでに、OPCの新たな機能を探る目的で、OPCを選択的に除去するための遺伝子改変ラットを作製し、成体脳でのOPCを除去した。その結果、多数のM1タイプマイクログリアが集積することを見出した。一方、M2マイクログリアは全く観察されなかった。本年度は、OPCによるマイクログリア活性化に関わる分子メカニズムを探る。末梢組織においては、T細胞から産生される抗炎症性サイトカイン(IL-4およびIL-13)がM2マクロファージの活性化に関わることが知られている。そこで、正常ラットおよびpolyIC誘発脳内炎症モデルラットにおけるOPCでのIL-4およびIL-13発現について、免疫染色法により検討した。しかし、いまのところ良好な陽性所見は得られていない。現在、OPCにおける抗炎症性サイトカイン発現については、免疫染色法に加え、FACS法を用いて検討中である。また我々は、OPCによるマイクログリアの活性化制御に関わる新たな分子を探索する目的でマイクロアレイ解析を行った。複数の候補分子の中から肝細胞増殖因子(HGF)に着目した。OPCがHGFを発現することを免疫染色法により確認した。さらに、HGFの脳内投与がOPC除去により観察されたマイクログリアの活性化を抑制することも明らかにした。このことは、OPCにより産生されたHGFがマイクログリアの活性化を制御する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画はOPCによるミクログリア活性化に関わる分子メカニズムを探ることであり、当初想定していたものとは異なる分子が関わる可能性を見出しつつある。この点において予定通り成果を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も引き続き、OPCによるミクログリア活性化に関わる分子メカニズムを解明する。そのターゲットして、新たに見出したHGFおよび抗炎症性サイトカインに着目しながら、より詳細な解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に得られた研究成果から判断し、購入予定であった遺伝子改変マウスや試薬(抗体など)を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度繰り越しとあわせた予算は、引き続き、得られた研究成果を考慮しながら、遺伝子改変マウスや試薬などに使用する予定である。
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