研究課題
本申請研究は、成体脳におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞(NG2グリア)が脳内環境保全にどのような役割を果たすのかを明らかにするとともに、精神疾患である双極性障害の発症に関わる可能性について調べることを目的とする。これまでに、我々はNG2グリアの選択的除去実験から、NG2グリアが炎症制御を介して、脳内環境保全に関わる可能性を示唆してきた。さらに、NG2グリアが直接的または間接的にマイクログリアの活性化機構に関わる可能性も示した。本年度は、昨年度に引き続き、OPCによる脳内炎症制御に関わる分子機構の解明研究を実施した。昨年度は、複数の候補分子の中から肝細胞増殖因子(HGF)に注目し、①NG2グリアにおけるHGF発現、②HGF脳内投与によるマイクログリア活性化抑制などを明らかにした。今年度は、NG2グリア特異的HGF欠損マウス作製のための準備を行いつつ、その他の候補分子について検索した。その結果、INFAR2、CD4などの分子がOPC除去後経時的に変化することを見出した。現在、これら分子について詳細な解析を実施している。また、我々は末梢組織(特に、毛包)におけるNG2陽性細胞の存在を明らかにするとともに、毛包NG2細胞が中枢神経系と同様に、分裂活性を有することや毛包形成細胞を産生する可能性を示唆することも明らかにした。さらに、毛包NG2細胞のin vivoイメージング法を確立し、毛周期のモニタリングに利用できることも示した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画は、NG2グリア(OPC)による脳内炎症制御機構の分子メカニズムを解明することが主目的である。本年度は、昨年度のHGFに加えて、NG2グリア除去により複数の分子(INFA2RやCD4)が変更することを明らかにしてきた。現在のところ、詳細な分子メカニズムの解明には至っていないが、NG2グリア(OPC)による脳内炎症制御機構に新たな免疫担当細胞の関与を示唆するデータを得つつあり、今後につながるものと考える。この点において、予想通りの成果を得ることができたと考える。
平成30年度の研究計画は、NG2グリアによる脳内炎症制御機構を解明するとともに、NG2グリア-脳内炎症-双極性障害の関連性について検討することを目的とする。
<理由>遺伝子改変動物の購入を延期したため。<使用計画>昨年度繰り越しとあわせた予算は、得られた成果を考慮しながら、種々の動物や試薬等を購入する予定である。
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