研究実績の概要 |
本研究は最新の脳画像医学および脳脊髄液蛋白バイオマーカーとの関連を解析し、精神疾患の病態解明、疾患鑑別といった技法の開発を行う。さらにヒトで明らかになったバイオマーカーを実験動物に導入し、精神疾患モデル動物における中間表現系の変化を検討することを目的に行われた。 近年、拡散尖度画像(DKI) と、神経突起密度(NDI)や神経突起方向散乱・密度イメージング(NODDI)が生体組織の微細構造変化を鋭敏に捉えうるとして注目されており、我々は平成28年度から30年度にかけてDKIを用いて精神疾患における疾患特異的な変化を検討した。平成28年度にはDKIとNODDIにおける各パラメーター同士の関連を明らかにした他、健常者を対象とした各パラメーターの正常加齢性変化を明らかにした。平成29年度にはDKIやNODDIを用いて大うつ病性障害患者における疾患特異的、および臨床症状と関連した局所脳構造の変化を明らかにした。平成30年度にはDKIやNODDIを用いて双極性障害患者における疾患特異的変化の検討を行った。双極性障害患者31名と健常被験者28名を対象に3次元T1強調画像とDKIを撮影し比較を行った結果、健常者と比較して双極性障害患者群ではMK value が右下前頭後頭束部分、右後部帯状回で低下していることを明らかにした。NDI valueでは右後部帯状回での低下、ODI valueでは左海馬での低下を双極性障害患者群で認めた。以上の点より、今後精神疾患の鑑別や症状評価へDKI, NODDIが応用されることが期待される。 精神疾患モデルマウスを用いた研究では、平成29年度にlipopolysaccharide (LPS)の投与による大うつ病性障害モデルラットを対象に [11C]PK11195を用いた検査を行い、うつ病モデル化前後での脳内炎症の差異をPETにより明らかにした。
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