研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来よりも空間精度、時間精度の高い解析手法を用いて、自閉スペクトラム症、うつ病の安静時機能結合MRIデータを解析することで、疾患特異的な神経ネットワークの変化を捉えるというものである。昨年度空間精度の高い手法を用い、自閉スペクトラム症における変化を描出でき、科学誌に出版された(Yamada et al., 2016)。今年度は時間精度の高い手法を選別するため、文献検索を行った。網羅的に検索を行い、それを総説という形で科学誌International journal of neuropsychopharmacologyに投稿、受理、出版された(Yamada et al., 2017)。そして、Allenが2014に発表した時間精度の高い手法(時間窓を1分間に短縮した)を用いて、自閉スペクトラム症72名、健常者70名のデータを解析した。上記手法に習い、5種類の脳状態が遷移すると仮定した。するとある1種類の脳状態の出現頻度が、自閉スペクトラム症で有意に低く(ttest, p = 0.0097)、自閉症度の指標であるAQ(Autism Quotient)総得点と出現頻度に負の相関が認められた(r = -0.2188, p = 0.0094)。すなわち出現頻度が低いと自閉症度が高いという関係である。この関係は自閉スペクトラム症群内でも認められた(r = -0.2461, p = 0.040)。今後、この1種類の脳状態のネットワーク特徴などを調べる予定である。
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