研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来よりも空間精度、時間精度の高い解析手法を用いて、自閉スペクトラム症、うつ病の安静時脳機能結合MRIデータを解析し、疾患特異的な神経ネットワークの変化を捉えるというものである。 1年目は自閉スペクトラム症群の島皮質を空間精度の高い手法で解析した。これにより、1つの解剖学的領域とも言える島皮質が8つの機能的な下位領域に分かれ、かつ、分かれ方が健常群と自閉スペクトラム症群で異なることが判明した。分かれ方が異なる領域の機能を推定する解析を行ったところ、自閉スペクトラム症群では、情動処理に関わる領域が欠如したり、聴覚処理に関連する領域の体積が大きくなっていた。これらは自閉スペクトラム症の症状と矛盾しないものであり、2016年度に科学誌Molecular Autismに投稿し、受理、出版された(Yamada et al., 2016)。 2年目は文献検索と時間精度の高い手法について解析を開始した。初めに時間精度の高い手法を含む、安静時機能結合MRIデータ解析について網羅的に文献検索を行った。そして、文献検索の結果を反映させた総説を科学誌International Journal of Neuropsychopharmacologyに投稿し、受理、出版された(Yamada et al., 2017)。そして、文献検索を元に、時間精度の高い手法について解析を開始した。 最終年度は、時間精度の高い手法の解析を引き続き行った。最初に時間窓を短くし、その時間推移をみる手法 (Allen et al., 2014)、次にボルツマンマシン分布で状態遷移をモデル化した方法(Ezaki et al., 2017)、相関係数とは違う手法で機能結合を推定する方法(Shine et al., 2015)などで解析を行った。しかし、2つのデータセットに汎化するような結果は得られなかった。
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