研究課題/領域番号 |
16K10237
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
傳田 健三 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (10227548)
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研究分担者 |
朝倉 聡 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (30333602)
中川 伸 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (60360905)
賀古 勇輝 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 児童・青年期うつ病 / 双極性障害 / 自閉スペクトラム症 |
研究実績の概要 |
わが国の小・中・高校生における抑うつ症状、躁症状、自閉傾向および自己効力感の実態ならびに相互の関連について検討するため、2016年7月、小学3年生、小学5年生、中学2年生、高校2年生、計3276名に対して調査を行った。調査票には抑うつ症状尺度(QIDS-J)、躁病診断尺度(MEDSCI)、自閉症スペクトラム指数(AQ-J)、特性的自己効力感尺度(GSE)を用いた。 QIDS-Jの平均スコアは4.7±4.0点であり、小3<小5<中2<高2と年齢が上がるごとに有意に高くなっていた。また中2と高2では男性よりも女性の方がスコアが有意に高かった。MEDSCIの平均スコアは4.3±4.1であり、中2と高2が小学生よりも有意に高かった。AQ-Jの平均スコアは20.4±6.1点で、小学生、中2、高2と年齢の上がるごとに平均スコアが有意に高くなっていた。GSEの平均スコアは70.4±15.3であり、小学生、中2、高2と年齢が高くなるほど平均スコアが有意に低くなっていた。またピアソンの積率相関係数において、QIDS-JとMEDSCI、QIDS-JとAQ-Jが正の相関関係を示した。またQIDS-JとGSE、AQ-JとGSEにおいて負の相関関係が認められた。 QIDS-JとMEDSCIの正の相関関係から抑うつ傾向が高ければ躁傾向も高くなると考えられた。これは児童・青年期うつ病が双極性障害へ発展しやすいことと関連があると考えられた。QIDS-JとAQ-Jの正の相関関係から、抑うつ傾向が高ければ自閉傾向も高くなると考えられた。これは児童・青年期うつ病が自閉スペクトラム障害と併存しやすいことと関連があると考えられた。自己効力感との関連では、QIDS-JとAQ-JがGSEのスコアと負の相関を示したことから、抑うつ傾向や自閉傾向が高い者は自己効力感が低下している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、2016年度は児童・青年期のうつ状態、躁状態、自閉傾向、自己効力感の実態調査を行った。2016年7月に、北海道の小学3年生、小学5年生、中学2年生、高校2年生、計3276名に対して、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)、躁病診断スクリーニング尺度(MEDSCI)、自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)、特性的自己効力感尺度(GSE)からなる調査票を用いた調査を行った。その結果を解析したところ、児童・青年期の抑うつ傾向はきわめて高いことが明らかになった。 この調査結果をもとに、児童・青年期うつ病・双極性障害の発達精神病理学的診断法と包括的治療法の確立に向けて、研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、北海道大学病院精神科および楡の会子どもクリニック(小児科発達障害クリニック)で治療中の155例の児童・青年期発症のうつ病・双極性障害の発達精神病理学的診断を行う。各症例においてどのような症状の変遷があったか、診断の変更があったか、治療の修正があったかを検討する。以上により、発達精神病例学的診断法を確立する。 また、楡の会子どもクリニックで治療中の22例(男性18例、女性4例)の重篤気分変調症(DMDD)の経過を観察し、その転帰調査を行い、DMDDの病態について確認し、治療法を検討する。 平成30年度以降は、児童・青年期のうつ病・双極性障害患者に対し、適切な薬物療法、精神療法(認知行動療法)、認知機能改善療法(CRT)を試み、わが国独自の包括的治療法を確立するべく今後の研究を推進していく。
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